股から血が出てんだぞ、赤飯なんか炊くな

「生理」って口に出しても殺されないから安心しろ

生理のこと「あの日」とか呼ぶなよ。ヴォルデモートじゃあるまいし。禁句でも放送禁止用語でもないだろ。隠すから怖いものだと思うんだ。汚いものだと思うんだ。エロいものだと思われるんだ。なんでドラッグストアやコンビニで謎の茶色い紙袋や黒いビニール袋に入れて隠されるんだ。何の裏取引なんだ。何もやましいことなんかない。

いいよ、ステッカー貼ってくれよ。

このお客様は生理用ナプキンを購入されました!

っていうステッカー、好きなだけ私の買い物袋に貼ってくれ。

「生理がある人」=「女性」ではない理由

「名前を呼んではいけないあの人」ことヴォルデモートが登場する『ハリーポッター』シリーズの生みの親、J.K.ローリングは今年6月、”Creating a more equal post-COVID-19 world for people who menstruate(生理がある人のためのより平等なコロナ後の世界を作る)”という記事に対してあるツイートをした。

‘People who menstruate.’ I’m sure there used to be a word for those people. Someone help me out. Wumben? Wimpund? Woomud?

— J.K. Rowling (@jk_rowling) June 6, 2020

(拙訳)「生理がある人」確かかつてはそういう人たちを表す言葉があったと思うんだけど。誰か教えて。ウンベン?ウインプンド?ウーマドだっけ?

要は、ローリングはこの記事が「女性」ではなく「生理がある人」という表現を使っていることを皮肉っているのである。しかし、記事がわざわざこのような書き方をしたのには理由がある。月経があるのは女性だけではないからだ。

「え?月経のある男性なんているの?」と思われるかもしれないが、トランスジェンダーの男性の中には生理がある人もいる。また、自分を男性とも女性とも自認していない人の中にも、月経がある人がいる。したがって「生理がある人」=「女性」とすることの危うさとは、月経に関する大事な情報共有や議論の場において、「生理がある女性」以外の「生理がある人」が、蚊帳の外に置かれてしまうことである。

アメリカに月経用ショーツを作っているTHINXという会社がある。この製品の売りは、ナプキンやタンポンなどの生理用品なしでショーツだけで生理期間を過ごせるよ!というものである。販売が始まったころ、私はTwitterでTHINXの存在を知り、そこでこの製品が生まれるきっかけとなった、トランス男性の悩みについて読んだ。2016年頃のことだったと思うが、当該のページが見つけられなかったので、同社の2018年のブログ記事の一部を抜粋する。基本的にトランスジェンダーの人々に対する、企業のスタンスは変わっていない。

Many people have less than positive feelings about their period, but imagine how these feelings may intensify if you don’t identify as a woman. For trans people with periods, menstruating can exacerbate dysphoria, as well as incite a number of complicated emotions. In a world where periods and menstruation are still almost exclusively tied to women’s health, it can be difficult to find the resources you need, or even feel comfortable enough to discuss what you’re going through. 

― Thinx Piece, Aug 23, 2018

(拙訳)多くの人が自分の生理を決してポジティブには捉えていませんが、自身を女性だと認識していない人にとっては、その感覚はより強いものになるでしょう。生理のあるトランスジェンダーの人々にとって、月経は不快感を強くもたらすだけでなく、たくさんの複雑な感情を呼び起こすものです。未だに月経が女性の健康とのみ関連付けられる世界において、(生理のあるトランスの人々が)必要なリソースを見つけたり、自身の経験について心おきなく語ったりすることは容易ではないでしょう。

普段は男性として生活していても、月経が来れば自分の体が女性であることを突き付けられるように感じ人がいる。男性トイレを使っているので使用済みの生理用品を捨てるゴミ箱がなく不便な思いをしている人がいる。言われてみれば当然のことなのだが、私はTHINXの話を読むまで、そんな人がいることを想像すらしていなかった。当時のは私は「生理がある人」=「女性」に何の疑いもなかった。多分、その時の私がローリングの発言を見ても、なんの疑問も抱かなかっただろう。

THINXはサイト内で徹底して「生理がある人」という言葉を使っている。それは、女性ではない「生理がある人」を絶対に排除しないというメッセージだ。

無知や無関心は、知らない間に誰かに不便を強いたり、誰かの権利を踏みつけたりしている。自分が知らないのが恥ずかしいからと言って、無視することはできない。人のこと踏みたくなければ、もっと学ばなければ。もっと考えなければ。もっと想像しなければ。

(2016年にTHINXがトランス男性モデルを使った広告を出した時のモデルへのインタビューもとても印象的なのでぜひ見てほしい。英語。)

「生理は個性」「生理中もハッピーに!」ぶっころす

生理用品は日々進化してる。前述のTHINXもそうだし、月経カップや月経ディスクという、ナプキンやタンポン以外のものが徐々に増えてきた。また、低用量ピルやIUSのように、避妊効果に加えて月経困難症の改善や経血量の軽減につながるものも少しずつ認知されるようになってきた。

生理は、経血量、期間、PMSの症状など、すべてに個人差がある。同じ人でも環境や年齢、生活習慣が変われば変化する。だから、選択肢は多い方がいい。自分が使いやすいもの、自分のライフスタイルに合ってるものを選ぶことは、生理と付き合っていくうえで大事なことである。

しかし、ロリエ(花王)が「生理を”個性”ととらえれば 私たちはもっと生きやすくなる」というコピーを引っ提げて「kosei-fulプロジェクト」を打ち出した時は、案の定炎上した。私も 腸が煮えくり返りそうになった。生理が個性だと?

月経によって起こる症状を「個性」などと呼ぶべきではない。生理の症状が重ければ、日常生活に支障が出る「問題」であるし、それは病気の兆候という可能性もある。「個性」とはその人物を他者と区別し、その人が何者であるかを語るものである。うんこやおしっこが誰かの「個性」になり得ないように、生理の症状も「個性」などではない。

また、女性向けメディアには「生理中をハッピーに過ごす方法」「ブルーデーをハッピーデーに!」「生理中も彼とハッピーに過ごそう」みたいなメッセージが溢れている。どれだけ生理用品が便利になって、今より快適なものが見つかろうと、生理中が「ハッピー」になることはない。絶対にない。生理中はファッキンアンハッピーでくそったれだからだ。(私は生理前も生理中もめちゃくちゃ下痢になるのでリアルにくそったれ状態になる。)

そんなクソみたいな期間、多少ナプキンの吸収力が上がろうが、肌に優しくなろうが、コンパクトになろうが、着脱が簡単になろうが、決してハッピーになることはない。マシになるってだけだ。

「いくらブタ箱の臭いまずい飯がうまくなったところで それで自由になったのかい」by岡林信康

ってことだ。

だから「生理をハッピーに」「ポジティブに」みたいなメッセージは全部焼き払いたいくらいむかつく。うるせーよ。さっさと正露丸買ってこいよ。こちとらトイレから出られねえんだよ。くっそたれ。くそったれは私か。やかましいわ。

教育は「生理」にしょうもないメッセージを託すな

小学校の保健の先生は「女の子の体は、大人になると毎月赤ちゃんのためのベッドをお腹に作ります。赤ちゃんができなかったときはそのベッドが要らなくなるので体の外に流れ出ます。それが生理です」と説明した。

小5の私は「なんで毎月ベッド捨てるんだ。」と思った。シーツ取り替えたら済むだろ。というか、なんで予約も入ってないのにベッドの準備してるんだ。子宮ホテルの支配人をクビにしろよ。あほの客室係は支配人の命令で今月もせっせと使われなかったベッドを捨てている。(確認したら、生理用品「エリス」のウェブサイトでも「赤ちゃんのベッド」という表現を使っていた。

中学の保健体育の先生は「生理って辛いよね。でも、生理が毎月来るのはみんなが健康だって証だから。体がちゃんと機能しているよって印なの!」と言った。

違うがな。その「健康の証」が来るたびに腰が爆発したり、頭痛で起きられへんかったり、眠気がやばくて勉強できひんかったり、お腹痛すぎて白目向きながら授業受けてる人間がおるんやがな。学業に支障が出とるんや。「健康の証」が、健康を害しに来とるんや。当然だが、生理が毎月来てても普通に病気の可能性はある。生理は生理が来ていることの証にしかならない。

高校の保健体育の先生は「女性は将来赤ちゃんを産むために生理がある。みんなもいずれは母親になる。月経はそのために必要なことで、すごく大切なものなんだ」と言った。

月経は妊娠と関係がある。だが、しかし、私が日常生活で生理に関してめんどくさい・しんどいと思うことと、将来出産するかどうかは全く別の問題である。「うーん…😢なぜか月に数日、下腹部が内側から針で刺されるような痛みに襲われるけど、これも将来赤ちゃんを産むために必要なことなんだよね😊がまん、がまん!😊」とはならない。高校生の私がこのタイプの下腹部痛に襲われている時に思っていたことは「こんな身体設計したやつほんまに死ね」である。

また、私は教育者が「みんなもいずれは母親になる」などと言う暴言を吐いたことが未だに信じられない。将来、母親にならない人も、なれない人も、閉経するまで月経と付き合っていくのに。あまりに無神経で差別的な言葉だ。将来母親になるかどうか、そんなのはお前がどうこう言うことじゃない。そのジャージ燃やすぞ。

私の身体に月経は起こる。もう、それは変えられない。だからこそ、私が学校で先生から聞きたかったのは、赤ちゃんのベッドがどうとか、将来ママになる準備がどうとか、そういうフワフワくそ煮込みファンタジーの話ではなく、その月経と、この後の人生どう付き合っていけばいいかという現実的な話だった。

月経前症候群、月経困難症、子宮がん・子宮頸がんの検診、低用量ピル、基礎体温のつけ方、もっといっぱい伝えるべき情報があっただろうに。気になったら気軽に婦人科に行って相談せよ、薬でなんとかなることも多いぞ、などとは誰も教えてくれなかった。教えてほしかった。

ちなみに私は大学生になるまでPMSについての知識がほぼなく、16歳くらいからの4年間、「死にたい。我に生きる価値なし。死にたい」という夜が毎月1週間ほど続く地獄デイズを送っていた。大学の先輩にその話をしたら「それはおそらくPMSでは?」という助言をくれた。それから婦人科に通うようになり、自分でも生理に関する情報を集めるようになった。まじで、学校が教えろや。ほんまに死んだらどうする。

最後に

生理は本当にろくなもんじゃない。私は「生理があってよかった」と思ったことは一度もない。これからも絶対にない。

言うまでもないが、今まで書いたことはすべて私個人の見解である。「生理中も工夫してハッピーに過ごすぞ」と思っている人を否定するつもりはない。症状が軽く、私の言っていることが全然理解できない人もいるだろうと思う。反対に私以上に「ファッキン生理」と思っている人もいるだろうし、様々な事情で自分に生理がない・来ないことに思い悩んでいる人もいると思う。

「生理がない人」が周りの「生理がある人」から話を聞いたとき、それが生理の全てだと思ってしまうことがある。すでに述べたが、生理には個人差がある。100人いれば100通りのファッキン生理エピソードがある。

だからこそ、教育やメディアや企業は、生理にまつわるエトセトラを、無神経に扱うな、と強く思う。不必要にポジティブなメッセージを託すな。クソなものにこれ以上クソをトッピングしてくれるな。

というわけで、初潮迎えたからって赤飯炊くのやめろ。気持ち悪いから。男は精通したら炒飯でも作るんか?あほか。赤飯は好きな時に食べさせろ。栗が入ってるやつがうまい。

(記事作成日:2020年8月22日)