子どもの頃、本や誰かが話す言葉の中に、とてつもなく好きな単語やフレーズを見つけると、耳よりももっと体の内側、意識のすごく遠いところで、静かにピーーーーーーンという音がすることに気づいた。
細い弦を優しく弾いたようなその音は、しばらく頭の中に心地よく響き渡って、体中に広がり、次第に心臓のドクドクという音にかき消されていく。
小学4年生のある日、辞書で「琴線に触れる」という言葉を見つけた時の私の喜びがわかるだろうか。ピーーーーーーンという音を聞きながら、この表現考えたやつ、私と一緒!!!!と心の中で大絶叫した。「琴線」という言葉と私の体験が、文字通り共鳴した瞬間だった。
学校から貸し出されている辞書に、皆がこぞって【ペニス】【ヴァキナ】など性器を示す単語に蛍光ペンで線を引く中(私の隣の席のF君は【マンゴー】という単語にも果敢に線を引いていた)、小学生当時から自意識の塊だった私は、この崇高な共鳴体験を記念して【琴線】という単語を黄色くハイライトした。
私はクラスのレベルに合わせるために、【金玉】にも線を引いておいた。同時に私は、金玉の別名が「ふぐり」であり、当時、毎日通学路で愛でていたかわいい青い花の名前が「犬の金玉(Lサイズ)」という意味だと知り、この世界が嫌いになった。このネーミングセンスには一切共鳴しなかった。どんな金玉頭がこんな酷い名前つけたんだ。
オオイヌノフグリ。漢字で書くと大犬の陰嚢。花に罪はない。
(記事作成日:2021年4月10日)