「奇跡の円盤化」とか「劇場未公開作品」のような触れ込みに弱く、直ぐに気になってしまう。
『シェラ・デ・コブレの幽霊』は、アメリカ本国で1964年に公開予定だったにもかかわらず、上映中止となりお蔵入りになった作品だ(現存するフィルムは世界中で2本だけらしい)。そこに尾ひれが付いて、あまりの恐ろしい映像描写のために中止になったのだ、なんて知ってしまったら観ない訳にはいかないではないか。ホラー映画好きとしてはチェックせねばと思い、早速鑑賞してみた。
どうやらテレビのパイロット版として制作された後に、未採用エピソードを追加して編集されたのが本作らしい。実際に本編と全く関係ない、海辺で女性と出会うシーンなどは、テレビ版で他エピソードと繋げようとしたのかもしれない。
内容はホラーミステリーという趣。当時のアメリカ映画としては珍しい「足のない幽霊」が登場する。この幽霊というのが、映像の上にフィルムを重ねたような多重露光で表現されているのだ。モノクロ映画なので、その効果が抜群に出ていて恐怖感が増している気がした。恐らく幼少期に観ていたらトラウマになっていたかも。脚本は起承転結が分かりやすく、ホラーと謎解きの要素が良く出来ていたと思う。
ラストは少し悲しい。
資産家マンドール家の美女ヴィヴィアが、60年代のファッション雑誌から出てきたような趣でとても素敵だった。丸いフォルムの内巻ボブと、跳ね上がるアイラインがかわいい。