両義性を感じる『The Last Resort』

ARARE.
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自分が好きなものをキャッチするアンテナはいつも不定期で、気紛れ。今回もそうで、闇雲にアート系のサイトを覗いていて、ピピっと電波を受信した。

それはイギリスのフォトグラファー、マーティン・パーの『The Last Resort』という作品集。

舗装された歩道で溶けたアイスクリーム・コーンを握る、兄妹と思しき幼い二人。口元はアイスクリーム塗れ。二人のバックには海が広がっている。何とも言えないローファイな日常を写し出した表紙に、ビビッときてしまったのだ。キッチュな色合いと、ストーリーを考えてしまうような構図、ちょっとくすりと笑ってしまうような抜け具合が心地よい。

この作品は、イングランド近郊北部にあったかつてのリゾート地「ニュー・ブライトン」をスナップしている(ちなみに本家ブライトンとは、全く関係なし)。1980年代のニュー・ブライトンは、低所得者層である労働階級者たちが出掛ける保養地だったそうだ。栄枯盛衰な荒廃ぶりで、寂れゆく街並みが物悲しい。

ゴミで溢れ返る街並みで食事する人々。人がごちゃ混ぜになったプール施設。失笑したくなる水着コンテスト(?)。ブルドーザーの残骸(?)の傍で横たわる(日光浴?)少年のシュールさ。

じわじわと退廃していくリゾート地の雰囲気がそこかしこに溢れているけれど、人々はどこか生き生きと逞しい。その矛盾めいた風景が心に響く。

@godhelpthegirl
テンション低めのオルタナティブ人間。穏やかでゆるゆるとした場所や時間が好物。