エンゼルスは良い球団

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連日の大谷選手の活躍に胸を踊らせていた私たち家族はついにエンゼルスの試合を現地で観戦するための算段を立て、9月発の家族旅行チケットをその約二ヶ月前に手配した。

当日までの1日1日をめくるように過ごしていた最中、8月中旬に大谷選手の肘の故障が発覚し、当シーズンは投手としての登板を行わないことが発表された。ショックではあったけど、打者としては引き続き出場すると伝えられていた上、こうしたときにもリスクヘッジとして働くのが二刀流の良さだろうとポジティブに捉えることにした。

そして9月5日、アメリカ行きの日の朝。出発準備をしていると、大谷選手が試合前の打撃練習中に脇腹に違和感を訴えたというニュースが入ってきた。状況は芳しくなく、場合によっては今後打者として出場することさえできないかもしれないとのことだった。自分たちが選んだ日程と大谷選手にとって数年に一度の不運が見事に重なりすぎて、「そんなことある?」と思わず笑うしかなかった。

しかしながら起こってしまったことは仕方がない。脇腹の状態によってはまた打者として出場できる可能性もあるとのことだったので、このスリリングな状況を楽しもうと思った。予定していたホテルはエンゼルススタジアムのすぐ近くだったし、日々のネビン監督のインタビューによると状況次第では代打で出す可能性もあると報じられていたため、大谷選手がスタメンにラインナップされていない試合でもエンゼルススタジアムに足を運んだ。Xにはアカウントに対する通知機能という、そのアカウントによるポストが行われたらプッシュ通知を飛ばしてくれる機能があることを知り、それを使って大谷選手の最新動向をキャッチアップして伝えてくれる現地リポーターのアカウントの通知をオンにした。

結局3試合エンゼルスの試合を観戦したが、大谷選手は一度も姿を表すことはなかった。先程通知をオンにしたアカウントからは、毎日午後3時頃に「今日もエンゼルスのスタメンラインナップに大谷選手の名前はありません(日本語訳)」というプッシュ通知が送られてきた。しかし、ここまで読むと悲観的に捉えられるかもしれないが、試合を観たあとの気持ちはどれも素晴らしかった。

球場に入ってから出るまで、少しでもお客さんを楽しませようというホスピタリティがあった。スタジアム特有の開放感の中で流れるクイーンやレーナード・スキナードのアンセムとそれに呼応するように観客が合唱する様子は、アメリカという国が長い年月で築いてきた文化的な誇りや人々の生き方を感じさせてくれた。(ただし、それでも大谷選手不在の試合は空席が目立っていたことからエンターテイメント/アミューズメント業界の厳しさを思い知ったけれど)

観戦した試合ではオホッピー選手が連日活躍していた。特に最後に観た試合ではチームに勢いをつけるホームランを放ちヒーローインタビューを受けていた。オホッピー選手やネト選手のような若い選手の眼差しにエンゼルスの明るい未来が見えるように思う。

大谷選手をきっかけにエンゼルスの試合を毎日観るようになったという人の中で、彼がドジャースに移籍したとしても変わらずエンゼルスのことが少し気になったり、なんだかんだで応援したりする人が多いのではないだろうか。自分自身、放映越しに感じていたエンゼルススタジアムのあの雰囲気の良さは現地を訪れることでその予感は正しかったのだと感じ、大谷選手を観に来たつもりだったけれど気づけばエンゼルスという球団のファンになっていた。

圧倒的に存在感のある選手が抜けることがチームになって痛手となることは間違いない。しかし、スポーツチームに限らず組織内における新陳代謝は次世代の視座を上げ、良い方向に転じることはよくある。今回のニュースを受けてのオホッピー選手の投稿などを見ても、来年以降のエンゼルスが消沈することなく、むしろ新しいチームとして勢いづくことがあってもおかしくないと思う。来年のMLBは大谷選手の活躍と同じくらい、エンゼルスの躍進が楽しみだ。