毎日、朝の支度時間に聴いているTBSラジオ「荻上チキ・Session」のポッドキャスト。時事ネタから雑学的な内容までジャンルが広く、しかもチキさんが分かりやすくまとめてくれたり、深掘って具象化してくれたりするので、情報源のひとつとして大変重宝している。
先日、そのコーナーのひとつに、敬愛する絵本作家のヨシタケシンスケさんが出演された。チキさん著・ヨシタケさん画の『みらいめがね』にとても救われた身としては、なんと言う夢の共演。しかも音声メディア。ありがたく拝聴した。
紹介していたのは、東京のNPO法人「ライフリンク」さんとヨシタケさんでつくられた、Web上の"かくれが"『かくれてしまえばいいのです』のことだった。自殺対策防止の一環で考案されたそうだ。
この世で、生きづらさや居場所のなさを感じたとき、あの世に意識が向かってしまうことは、過去少なくなかった。物理的な距離として居なくなるのではなく、リセットボタンを押して存在を無かったことにしたくなるような感覚が、度々襲ってくる。こんな思いを経験した、またはしている人は、哀しいかな世の中にたくさん居て、そんな人たちに、つかの間のかくれがを提供してくれるのが、『かくれてしまえばいいのです』というサイト。ヨシタケさん曰く、これは、この世でもあの世でもない「その世」だそう。
"この"と"あの"の間にある、"その"の絶妙な距離感と余白感。ここに隠れるという発想。なんてやさしい世界観をつくってくれたんだろう…!と心のスタンディングオベーションが鳴り止まない。なにせ、自分ごとで言えば、当時間違いなく求めていた世界だったから。「この世に居たくない、でも無闇にあの世に行きたいわけでもない。でも、行き場のない、消えてしまいたくなるこの心を、一体どうしたらいいのだろう」と悩み、助けてと言えず、言っていいのかも分からず、もがいたあのとき、確かにその世を求めていたと思う。
今となっては笑って話せることだけど、心の傷痕としては残っている。無かったことにはできないし、傷痕のおかげで、やさしいほうの自分に近づけたところもある。だから、過去のことも、今の自分にも、そして周りにも、ありがとうの気持ちは絶えずある。
これですべてがうまくいくなんて思わないし、今このときも、この世を苦しいと思う人は数えきれないほどいる。確実に。だけど、ほんの少しでもこのかくれがが、その心を軽くしてくれる存在になるといいなぁと願う。
ちなみにこのポッドキャストはまだ配信されているので、TBSラジオ「荻上チキ・Session」で検索してみてほしい。テレビでも文章でもなく、ラジオだからこそ伝わる温度感が漂っているから。
チキさんもヨシタケさんも、生きづらさを抱えながら、それでもなお自己表現される様に、また一段と追っかけ度が増してくのだった。