Twitter(現𝕏)で話題になりやすいテーマの一つである「新卒VSベンチャー」。「新卒は大手行っとけ」の大合唱の中で自分はこの選択をしようとしています。
何故そんな愚かしいことをするのかを書き記したいと思いました。
いろいろ言われそうな気がするので静かなインターネットに静かに流します。
過去に自分がどう思ってこの決断をしたのか、どんなことを考えていたのかを未来の自分が振り返れるように記しておきます。ついでにどこかの誰かの参考になればいいのかなと思います。あくまでこれは私の考えを記したもので、正しきことを記したものではないことに留意してください。
前提条件
前提条件です。私は某大手A社を蹴り、某B社を受諾しました。どこの会社かは濁したいけど、わかる人が見たらわかるかもしれません。
A社
某大手コンサル・SIer企業。実質的には待遇そのままにその子会社のセキュリティ企業への出向となる。脆弱性診断・セキュリティソリューション提供をB2B主軸で行う。セキュリティエンジニアとしてのキャリアが予定される。
B社
某AIミドルベンチャー中小企業。AIソリューション・AISaaS・その他新事業を提供する。マザーズ上場済だがストックオプションは無い。AI研究ではなくソフトウェアエンジニアとしてのキャリアが予定される。
……とここまで書いた通り、大手側も子会社といわゆる大手にあるようなしがらみからは遠く、ベンチャー側もいわゆるスタートアップに比べれば安定性は備えている。なので世間の雑語をそのまま適用しずらい条件となっています。
以下に記すのはざっくり言えば諸々を勘案して「めっちゃ良い大手」を蹴って「めっちゃ良いミドルベンチャー」に飛び込む話となっています。
だから大手は古臭いみたいな話やハイリスクなベンチャーみたいな話ではないです、おそらく。
比較検討
待遇
多くの人が一番ここを大事に思っているようです。自分もお金が多いと嬉しいです。
給与の額面は初任給は同程度(1年目はみなし残分B社が高い)、最初の急激な登り幅としてB社に期待が持てる状態です。
しかし、十年先等を考えればA社がそれを上回る可能性があります。給与平均はA社の方が200万円程度高いです。
A社には給与面で年功序列的な側面が残っており、今後脱しようとしているようです。働いている間に後から辞めますと言われるのは正直リスクに思います。現状その状態から脱するというのが果たして今後働くうえで自分に良い方に働くかは疑問です。が、A社ならそこまで悪いこともしないだろうというところに落ち着きます。
また、福利厚生としてもB社は頑張っていますがA社のそれにはさすがに見劣りするのが実情です。A社の休暇制度等は目を見張るものがありますし、特に資格取得補助に関しては相当自由にさせてもらえるようです。業務時間に割り当てることもできます。
では他方でB社が育休等できてないかといえばそんなことはないし、全社会後の打ち上げに子連れで来てた人も居たし、諸々の支援制度くらいはあります。
総合すれば生涯賃金はそこそこ減るだろう程度で、ここで多少の額面でもって単純にA社を選ぶのは違うように思いました。
企業風土
A社は面白い会社で、大手とは言いながら、その子会社の社内ベンチャー発ということもあり、セキュリティとはいえ堅苦しさは相当低減されています。テレワークもできます。流石にオフィスカジュアル等多少の制約はありますがJTCと揶揄されるようなものではないです。オフィスグリコもあります。きつい飲み会も子会社においては無いです。セキュリティに関する勉強会なども開かれているようです。
じゃあB社はといえば、もっと緩いです。テレワークは勿論、流石にと言われるレベルのものもないのでパーカーも大丈夫そう、オフィス下の専用スペースで飲酒可のLT回やエンジニア交流会が月一で開かれてするような感じです。
B社に軍配が上がるけど、A社も十分頑張っているし我慢できるレベルといえばできるかなと。A社のインターンの一週間で革靴が靴擦れ起こしましたが、数年やってれば慣れる程度の問題でしょう。
将来性
A社は確かに伸び率としては難しいところがありますが、大手なこともあり、安定して着実に伸びています。対企業のセキュリティは確実に求められており、またそこの信頼も確かに勝ち取っています。
B社は偶々今爆裂に業績がいいです。確かな技術力でもって複数のサービスを成長させています。しかし、果たしてこの状態が続くのか、AIバブルが弾けてしまわないか、という懸念があり、そこは賭けになります。
安定性でA社が群を抜いているようでいて、セキュリティの分野はほんの一つの失敗もリスクになりえますから、全く問題なしとも言えないと思います。
また、急激なAIの成長がある中で、そもそも安定性というものがどこまで担保になるのか、これも疑問です。これを考え出すと超スーパーAGIによる既存産業全ての薙ぎ倒しみたいな妄想にたどり着いてしまいますが、それを夢物語と完全に切り捨てられないのが現状かと思います。特にパソコンで完結するエンジニアは何やってたとして割とAIの餌食になりやすい側でしょう。
精度の高い予想は不可能という結論に至りました。
雇用は守ってくれそうなA社か、AIの成長に敏感で素早くキャッチアップできるB社か、という選択かと思います。
新卒三年間で取り組めること
A社には新卒研修があり、簡単なところから始まりセキュリティに関してきっちり学ぶこととなります。そこまで横並びとはならず各々のレベル感への配慮もあるでしょう。
他方B社はやや劣るものがあります。実務の中で覚えていくこととなります。OJT形式となるので先輩から見て学ぶ他ないでしょう。
幸いにもインターン程度の業務をこなせる程度の実力は備えている自分が、新卒で自分の今後一生の仕事観を染め上げるとしたとき、より業務・より実務に関われること、成果物を出せること、先輩に揉まれること、そのあたりに重点を置くことが大事に思いました。
マッチング
そもそも何故大手セキュリティとAI系ベンチャーが残ったかといえば、内定までの経路が異なります。
一方は、高校の頃に参加したセキュリティ系CTF体験会みたいなところでに漠然とした興味を抱き、あれよあれよという間にセキュリティの研究室に行き、その延長で縁があって辿り着いたA社。
もう一方は、小学生の頃からプログラミング大好き開発大好きと長らくやってきて大学生で技育祭に参加し、そのご縁で出会ったサポーターズでのエンジニア就活の中で縁があって辿り着いたB社。
いわば、自分の中にあった二つの価値観の果てにたどり着いた2社であり、この価値観のぶつけ合いです。
ここまで考えたときに、「自分は言うほどセキュリティをやりたいと思ってるのか」という根本的な疑問が生じました。
仕事を「やりたさ」で選ぶのはいかがなものかとは言われますが、少なくとも自分は人一倍やりたいことに対してパフォーマンスが最大限発揮されるタイプである自覚があります。業務内で生じる多少のやりたくなさは堪えられても、その業務自体での価値観のずれは非常にまずいと感じています。とりわけエンジニアなんて自学自習的態度が強く求められます。資格支援も、社内の勉強会も、そこで頑張れないのであれば意味がありません。
就職活動とは馬鹿にできないもので「御社にどう貢献するか」を示す中で「どう成長した自分を描くか」ということと徹底的に向き合う場になります。「物を作りたいか」「物の安全性を保障したいか」の二択において自分は正直前者であると答えざるを得ません。確かにセキュリティは大切ですが、自分がそのエージェントとして従事することへ共感がいまいち持てませんでした。
そもそも選考を受けたセキュリティ系を主軸とする企業は大学の時にイベントで参加し、研究室の先輩も在籍するここだけです。この会社だからよいのだろうという思いで選んだところがあります。
結局自分はCTFもやり込んではいない、セキュリティの界隈で特別キャッチアップをしているわけでもない、セキュリティやりたいとそこまで強く思っていない。
一方で、個人開発は長らくやれている、インターンもうまく参加できている、物を作りたいと思っている。
この指向的なところでのマッチングがB社には強く惹かれるものがありました。
方々から寄せられた・寄せられそうな懸念
悩むくらいなら大手に行け
考える猶予期間が一か月生じたので、なるべくフラットに現状を見るべく、意識的に「悩む」という立場を取りました。
ただ、内心ではもう決まっていたというか、はっきり言って結論ありきで論理を組み立てていたような、どのように「新卒では大手に行っとけ」に言い返すかを探っていた感覚は拭えません。
給与は少しでも多い方がいいのではないか?
自分の趣味なんてパソコン触ることが殆どだし、後は読書等と金より時間を食うものが多いように思います。ほかにも人生何かと入用はあるかと思いますが、B社が殊更安いわけでもないですし、あらゆる他の要素をかなぐり捨ててまで給料を1円でも高くすること自体には現状価値を感じませんでした。
その会社はどこかに買収されたりしないか?体制はいつまでも続くのか?長期的な視野でみてどうか?
可能性も0ではなく、雇用が安定的とは断言できないのが実情と考えます。
ここは人手不足の時代である今なら技術さえ抱えていれば、どうとでもなるだろうというある種の舐めがあるのは事実です。
AIは業界の変化が激しくて心配
今B社が絶頂期だからと言って今後ともこれが続くかはわかりません。B社はAI自体というよりもAIと分野ごとのソリューションを結びつける企業であり、この需要自体はバブル的なものにはならないだろうと予想しています。自分の業務はその中でAIの業界の流れから比較的離れたところであることから、AI企業としてのリスクは許容できる、むしろこの距離感ならばAIの動向が追える分利点と考えます。
新卒研修は大切
これは父親からも言われたのですが、業務外の領域、特に論理的思考力方面では独学で補わざるを得ないという点には同意します。
しかし、新卒研修のために大手を受けます、という挙動には違和感を覚えます。大事なことを学べると思いますが、新卒研修それ自体で会社を選ぶのは違うのではないかと。
ここは自主的に頑張るという他ありません。
新卒で行く必要はあるのか、中途から入るでよいのではないか?
真っ新な自分をどのような企業文化・マインドに染めることが価値高いか、を考えると、新卒で行く価値があるように思いました。
老年ならともかく、若いうちは、新しい時代を作る気概のある会社、その熱に身を置く価値があるのではないかと思いました。
これは新卒カードの価値を見誤っている可能性もありますが、少子高齢社会で売り手市場である今新卒カードの切り方の定石に縛られるのは違うように思いました。専門職ですし。
AIエンジニアとしては兎も角ソフトウェアエンジニアのキャリアとしてどうなのか
AI研究室の友人の何名かから聞いて、そちらの方面での就職先としては評価が高かったように思います。他方ソフトウェアエンジニアとしてはどうか?AIエンジニアに比べると情報も少ないように思います。
自分が所属予定のチームとしてはある程度開発方面に力の入った部署であり、新卒で取り組む価値はあると思います。配属偏向の懸念は残りますが、漫然と取り組むよりは必要に迫られて身に着ける方が習得度は高いように思いました。
ポエム
小学校の文集を見返したところ、将来はプログラマーになると書いてしまいました。パソコンが好きだから、プログラムを通してみんなを幸せにしたいそうです。将来は日本の誇るプログラマーになるとまで書いています。(確か大げさに書くべきくらいのことを言われたような気がします。)
残念ながら日本が誇ると言えるほど卓越した技術はまだ備えていませんし、まだまだ至らぬ点も多いと感じます。しかし、あのころ描いた夢のままに進路を突き進んでいます。多少ガワが整ったとして、本質的にあの頃と変わっていないのです。
無論当時は業界も業務もITエンジニアの何たるかも知らない、プログラミングしてソフトを作る人、程度の理解しかありませんでした。「プログラマー」という言い方もあまり見ないような気がします。
他の人は、もうちょっと背伸びした文体だったり、字が綺麗だったりという印象を受けました。自分の物はそれと比べれば見劣りする、やや論理的にも破綻している文章でした。実際に取り組んでいると豪語する内容も直近数か月のネタではないでしょうか。中学に行った途端飽きていたように思います。ただこの文章を書いた当時の自分には、推敲しているうちにどんどん歪になっていって、論理が破綻するくらいコアとなる強い感情があったと我ながら感じます。その感情の源流に近いのは、B社であると感じます。
何千文字と書きましたが、熱に浮かされてB社を過大評価している懸念は拭えません。10年後の自分が殴り掛かってくるかもしれませんが、一か月くらい悩んだフリをした結果こうなったので、未来の自分にはこの時点での選択を納得してもらう他ありません。
どうせ選べる後悔なら、微妙にやりたくないことやって後悔するより、やりたいことやって後悔したいタイプではありませんでしたか?大学受験で浪人する気もないのに第一志望を譲らず結果的に第四くらいまで転げ落ちて、それで悪文の年とか補欠合格なんだから実質合格だろとかうだうだ言いながらもこの受験戦略自体に異議を考えた事は無かったと思います。
だから私は現状この選択は失敗ではなかったと思います。