回りもの

gyoson
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 夕方、明日の仕事中にかじる菓子パンを、村の個人商店に買い求める。するともれなく付いてくるのが店主との会話だ。その日の気分で要ったり要らなかったりするのだけれど、店主殿には申し訳ないが、今日は特に要らなかった。

 久しぶりだね、元気かい、仕事場新しくなったんだってね、使い心地はどうだい、衛生うるさいんだ、へぇ毎日ブラシがけ、消毒も、中と外で靴履き替えて、大変だね、頑張ってね、ありがとね、また来てね、〇〇さんによろしく・・・

 いや、ひとつひとつ真面目に返答をひねり出す僕も悪い。悪いんだけど、それがその店における客としての自然な在りようであって、それに逆らうのはどうにも座りが悪くなってしまうので。これもまた売りものだと思って、なけなしの手持ちをはたいて買う。それでこそ万事は回る。

@gyoson
寝る前にこぼれる言葉を溜めておいて、あとで渇いたときに掬おうという魂胆です。