長崎旅行3日目。
がんばって6時半に起き、メイクをし、チェックアウトして、事前に予約していた軍艦島クルーズに乗りに行く。乗り換えナビで出てきたバスの乗り場がよくわからず無駄な時間を過ごし、結局路面電車に乗ったらすぐ港に到着した。これ、今後長崎などに行く予定の人にアドバイスなんですけど、乗り換えナビアプリだと電車やバスを利用する行き方は表示されても路面電車は考慮されないみたいです(アプリによるかも)。なので、アプリで出てくる通りに移動しようとするよりもそのへんの路面電車の駅に行ったほうが早く目的地に着けることがある。
港に着いた頃にはいいお天気だった。やまさ海運のそこそこ大きなクルーズ船で、外国人観光客を含めたくさんの人が乗っている。窓がなく直接海を見られる2階席に友達と座る。またしても朝ごはんを食べ損ねていたので、出航までの待ち時間、海を眺めながらコンビニで買った高級ないくらおにぎりを食べる。おいしい。ほどなくして出航。船の後ろに大魚の尾っぽのように(本当にそういう形をしている)長い長い白波が出るのを見るのが好きだ。で、きれいなのはいいのだが、窓がないので、強風、大いに強風。寒すぎる。胸に貼ったツアー参加者であることを示すシールが風で剥がれかける始末。吹きすさぶ風の中でいろんな島を見る。目の前の地形と、頭の中にものすごくおそろしくぼんやりとある九州の地図とが全然噛み合わず、今見ているのがどのあたりにあるどういう島なのかわからないが、とにかく小島が多い。港からかなり離れたところにある島でも、建物がけっこう建っていて、人はどこまでも住むんだな……と思う。造船所をはじめて見る。
30分ぐらいかけて、軍艦島(端島)にたどりつく。強風の影響で上陸できなくなるんじゃないかと心配していたが、無事上陸できるとのことで、やったー。船から降りてみると、船の下部を浸している海水が緑がかった透明できれい。軍艦島はこんなかんじ。
3つの広場に順番に集められて、そこから見える建物についてガイドさんが説明してくれる。アパート、公務員が住む高級なアパート、学校、工場、真水のパイプを通すところ、炭鉱に降りていくエレベータなど。コンクリ、石、れんがが混じり合ったごわごわした壊れかけの建築物の間から、明るい色の植物がどんどん生えて茂っていく。とんびが建物すれすれの低い位置を旋回している。とんびかと思いきやからすの群れも来ていた。ここでからすは何を食べているんだろう? あんまりこういうところにからすがいる印象がなかった。
炭鉱で働く人たちはふつうのエレベータの8倍だかそんな速度で地下に落ちるように降りていったと聞く。気温30℃、湿度95%の環境で8時間働く。煤で真っ黒になって出てくるので、炭鉱の外に張りついた煤を落とすためのお風呂が3段階あって、それらに入ってから家に帰るんだそうだ。ただ、この島での暮らしは経済的にすごく豊かで、戦時中もばんばん建物を建てていたらしい。経済成長や戦争に「貢献」してもらうために、国が良い条件を用意して島に人を呼ぶ。島は実際に、国家にものすごく「貢献」する。いろいろな時間と思惑が空っぽになった島に残されている。
台風のときはいちばん高くにある建物のところまで高波が届くんだと聞いてびっくりした。そんなところに住むのは怖くないだろうか(しかし、それでも人は住む)。無人島になって以降は、ひたすら台風によって島の建物が削られ、壊れていっているらしい。でも、高いところに小さな神社があって、櫓のような形のつくりなのにまだ全然壊れていなくてすごかった。どういうふうに作ったんだろうか。
クルーズを終えて中華街に行く。友だちはまだちゃんぽんを食べていないし、わたしも2回ぐらい食べて比べてみたいしということで、老李という中華料理屋さんに入った。水餃子がおいしいと食べログなどに書いてあったので水餃子と、長崎に来てからまだありつけていなかったハトシと、ちゃんぽんを頼んだ。座った席の横にある壁の、なんていうか、中華ふうの建築によくある木の格子窓に埃が糸を引いていて、全然掃除してないんだなという思いでしばらく胸がいっぱいになるが、すぐに水餃子がやってきた。味が濃くてもちもちでおいしい。そのあとちゃんぽんとハトシが来る。ちゃんぽんはボリュームたっぷりで、イカやアサリが入っていてちょっと魚介の味が強く、1日目に食べた蘇州林のちゃんぽんと比べると、どちらもおいしかったけど個人的には蘇州林のほうが好み。ハトシは外側がこんがりしていて、揚げドーナツみたいな甘い香りがあって、それが内側のエビのすり身とマッチしておいしい。そもそもエビのすり身を食パンで挟んだものがハトシであることをそのとき検索して初めて知った(ずっと「何?」と思いながら「食べたいね」と言っていた)。
長崎駅のほうに戻り、かもめ市場でおみやげを見る。わたしは今回、福砂屋のカステラ、茂木のびわゼリー(空港で買った)、五島うどん(1日目の夕食のお店で買った)、カール(空港で買った。もはや関東には売っていないので)をおみやげとした。カステラのお店がたくさんあって迷ったけど、福砂屋のが文明堂などと比べてしっとりしているというインターネットの情報と、袋とかロゴとかかわいいからという理由で福砂屋に。福砂屋がロゴにしているこうもりもまさにそうなんだけど、「文化圏Aでは不吉・ダークなものとして表象されるけど文化圏Bでは吉兆とされている(ことを自分が知っている)もの」を見ると、ダーク感とおめでた感を同時に味わえてお得なので好きだ。
かもめ市場でトイレに入って、ちょっとツイッターを見たら、大量虐殺に抗議して自死したアメリカ空軍所属の人のことを知った。しばらく頭が動かない。
空港に行く。関東での強風でフライトが30分遅延。暇なのでまたおみやげを見たり、潜伏キリシタン関連遺産について解説している動画が流れているのをじっと見たりして過ごす。ソラシドエアの、ナッシーとかいう明るいケルベロスみたいなポケモンをフィーチャーしている飛行機に乗る。無事故郷に帰ってきた。
3日間、とても充実した旅行だった。長崎は(旅行先としては。住んでいる人がどう思っているかは知らない)美しい良いところだった。いろんなスポットの観光をぎゅっと詰め込んだので、なかなかうまくやれたと思う反面、そのぶん友だちとホテルでごろごろするとか積もる話をするとかそういう時間はあまり過ごせなかったなとも思う。今回の旅行に不満があるとかではなく、むしろとても楽しかったからこそ、前向きな野望として、もっと旅行に行きたいなあと思った。国内のいろんなところに行きたいし、海外にも当然行きたい。そんなお金も時間もないけど。またこういうことができたらいいなと思った。