フォロワーさんと渋谷のユーロスペースでやっている(※大阪など他の劇場でもやっている)「イスラーム映画祭」に行く。祭というだけあって四日間にわたってたくさんの映画が上映され、トークセッションなんかもあるのだが、わたしは次の日バイトなのとちかごろ体力がないのとでひとつしか鑑賞しなかった。
「メイクアップ・アーティスト」という映画。イランの山地に住んでいるバフティヤーリー族という人たちの中で、タイトルのとおりメイクアップアーティストを目指す女性を主人公とするドキュメンタリーだった。彼女は大学に進学してメイク技術を学びたいと思い、というかすでに大学の入学試験にも通過しているし学費も一部払っているのだが、家庭で遊牧や子育てに専念してほしがる夫や、しきたりを重んじる年長者たちに阻まれうまくいかず、自分の代わりに遊牧や子育てを担える第二の妻を探す。こういうふうに書くと、マジで仏頂面の気難しい古めかしい家族に立ち向かう若々しい主人公、みたいな構図をイメージされそうだが、みんなそれぞれにおちゃめで愛情深く信念があるし、主人公と夫はけっこう公然とイチャついたりもしている。それでも話が堂々巡りになり何度も振り出しに戻り夫婦関係は破綻しはじめ、というあたりが、最初から冷え切った仲である場合よりも痛切にままならなさを伝えている。
雪の積もる山並みやきらきらとした豊かな草地、流れる川や動物みたいなかたちの謎の岩のオブジェ、などなど、山地の風景が美しかった。ヤギや羊、ロバ、馬がいっぱい出てきて、それもよかった。人間はずっとああ言えばこう言うでバトルしまくっていた。
鑑賞後、タパス・タパスというふざけた名前のパスタチェーン店でカルボナーラを食べた。渋谷にインターン先のオフィスがあったころインターンの人たちと一度来たが、その時「ふざけた名前のわりにちゃんとおいしいな」と思ったのを覚えていたのだ。ドリンクバーでジンジャーエールを押したらなぜか一切甘くない炭酸水が出てきた。食欲旺盛なためカキフライも食べた。料理はふつうにおいしいのだが、地下にあるためか店の入り口のあたりでたしかにドブのにおいを嗅がされる瞬間があり、そこだけどうにかしてくれと思った。
お店に少し長居してフォロワーさんといろいろな話を楽しんだが、なぜかホラー映画とか怖い話とか未解決事件とかの話題に偏ってしまった。「山はとにかく怖い」という勝手なイメージで意気投合した。わたしが楽しめる自然は尾瀬のハイキングが限界値(でも熊が出たら怖いので、それも嫌かも)。
フォロワーさんは夜に上映される「私は今も、密かに煙草を吸っている」を鑑賞する予定だったので、別れてわたしだけ先に帰る。「私は今も~」は、正直、めっちゃ観たかった……。内容的に関心があったし、単純に作品としておもしろそうだと思った。夜にフォロワーさんの感想ツイートを見たら、すごく満喫されたご様子だったので、やっぱ観ればよかったなと思った。
帰り、駅前にパレスチナについてスピーチしたりフライヤーを配ったりしている方々がいた。「お疲れさまです」とねぎらいの意を伝えてフライヤーを受け取ったが、みょうに無愛想になってしまった。立ち止まってうんうんうなずきながらスピーチを聴き、なんなら拍手もするぐらいサポーティブな聴衆になれるようになりたい。