最高気温22.7℃、北海道の11月はいつからこんなに暖かくなったのか。視覚でハッキリと稲妻が確認できるぐらいの落雷が連日続き、綺麗だなと思ったが、これが温暖化かとなんだか胸がザラついた。
きっと私がおばあちゃんになる頃には雪はもう積もらないかもしれない。子供の頃から、今も、朝起きて一面真っ白に染まった世界を窓越しに確認して、寒ければ寒いほどなんだか胸がワクワクした。今年の初雪はいつだろうか。
それなのにやっぱり夜は寒くて、半袖で寝ていたら喉が痒くなって目が覚めた。
寒暖差アレルギー。舌で喉の奥を擦って痒みを鎮めようとするけれど、やればやるほど痒みが止まらなくなるのはわかっているのにやめられない。そのうち鼻水が垂れてきてくしゃみが止まらなくなり、私は耐えきれずに布団を飛び出した。
時刻は2時を回ったばかり。
なんとなくこの時間は怖い、この前見たゾゾゾを思い出してしまい体が自然と強張る。
ならば見るなと良く言われるが、私は見えない世界を割と、かなり信じている。自分では見えないけれど。だから気になる。あとは単純に廃墟が好きなんだけど。話は戻り、温めた牛乳に蜂蜜入りのオリゴ糖とインスタントコーヒーを入れて、普段は見ないテレビを怖さ軽減の為につけた。
普段は耳障りな音も、今だけは私の安心材料になっていて、youtubeでmikuさんの動画を観ながら、もうクリスマスかと思った。
mikuさんは動画内でクリスマスツリーを飾りつけながら、クリスマスは当日までを待つ時間が楽しいと言っていた。その通りだと思う。
11月になった瞬間に自宅をクリスマス一色に染めたmikuさんを見て、ちょっと早くない?と思ったが自分ももう散々クリスマスソングを聴いていたので人の事は言えないと思った。
私はいつもクリスマスが近づくと、金森倉庫を思い出す。雪が積もった赤レンガ、大きなクリスマスツリーは遠目からわかるぐらいに灯りを宿して、沢山の人で溢れる。
金森倉庫の中にあるお菓子の量り売りのお店が小さな頃から大好きで、特にグレープフルーツのグミとカラースプレーがついてる丸いチョコレートをよく買っていた。昔沢山のお菓子が所狭しと並んでいたあの場所は今はもう何もない。街がクリスマス一色になって、スーパーでもクリスマスソングが流れて、世界が少し浮き足だったあの感覚が好き。
クリスマス当日は、この楽しい時間が明日から終わってしまうんだな、一気にお正月になるんだなと思ってしまい少し悲しくなる。
そうやって来年のクリスマスまでのカウントダウンをまた楽しむ季節まで、この気持ちごと封印する。この切なさを思い出すまでが1セット。
テレビのチャンネルを変えると洋楽を紹介する番組がやっていて何となくかけた。
mvが流れる画面は、なんだか不穏な様子でホラーがかった演出に若干見たことを後悔したが、何故かその映像とは裏腹に流れるメロディーは穏やかで柔らかく、わたしの心にぬるっと入り込んできた。
d4vd、画面の左上に小さく書かれた文字を見た時、それがアーティスト名だとはわからなかった。2曲目が流れた時、この人のことを知りたいと思った。すぐに検索すると2005年生まれの表記を見つけて一瞬眩暈がした。
まだ10代なのか、てっきりベテランの歌手だと思った。そのぐらいオーラを含んでいた。
彼が楽曲制作をするときは、妹のクローゼットで1人になるそうだ。彼の紹介文には孤独という単語が何度か使われていて、一番印象に残ったのは一度沢山の人がいる場所で楽曲制作をしようとした時があったけど、違和感しかなかった。妹のクローゼットで1人閉じこもってiPhoneとイヤホンの中で曲を作る。そこは瞑想のようなことができる。という所。
だからか、彼の曲は私にとって本当に心地のいいものだった。憂いを帯びた柔らかな声とサウンドは初めて聞いたばかりなのに何故か懐かしさを感じさせた。
起きてよかった、と思った。
睡眠の途中で目が完全に覚めてしまって、2時なんて変な時間にどうしようと起きたときは思った。だけど私は珍しく、起きてしまったものは仕方ないと開き直ってこの状況を楽しむ方向にシフトした。その結果素敵なアーティストに出会った。もしかしたら今後どこかのタイミングで出会っていたかもしれない。だけどあの番組を見なければそれが1年後か、5年後か、はたまた10年後になっていたかもしれない。
偶然深夜に起きて、偶然かけた番組で、偶然出会ったアーティスト。だけど何かにつけて全てに意味を持たせたい私はそれすらも運命的だと思える。彼の音楽はきっとこれから何度もわたしの孤独を埋めてくれる存在になるだろう。
ふと天井を見上げて、丸い電気の写真を撮った。昔好きだった漫画のヒロインがやっていた行動だ。だんだん瞼が重くなってきた、アレルギー反応も治ってきたのでもう一眠りつくことにする。おやすみ。