2024/03/31 王子動物園と「横尾忠則 ワーイ!☆Y字路」横尾忠則現代美術館

hachimoto8
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友人と王子動物園に行った。1951年開園という歴史ある動物園で、国内最高齢のパンダ「タンタン」がいることでも有名だ。阪急王子公園駅の構内からしてパンダだらけで、園の内外にパンダショップがあり、パンダがモチーフの土産ものがたくさん売られている。銃砲火薬店の看板にまでパンダが描かれている始末だ。中学生以下無料という子ども連れに優しい料金設定もあって、チケット売り場には午前中から長い行列ができていた。

摩耶山に続くエリアに建てられているので敷地全体がゆるやかな坂になっていて、散策しているだけで太ももにきいてくる。園内には遊園地やハンター住宅など動物以外にも見どころがある。肝心の動物たちといえば、パンダのタンタンは高齢のため展示を中止しているし、歩いていると訃報とともに空の檻やケージだけが展示されている箇所がけっこうあって、わびしい気持ちになった。いや、それはこういう施設にくると暗い面ばかりを進んで探してしまう自分の問題かもしれない。コアラはたくさんいるし、ホッキョクグマは雪山を作ってもらっているし、アシカの親子が楽しそうに泳いでいるし、ゾウ・キリンなどの花形からオオアリクイやナマケモノといったニッチめの動物までたくさんいるよい動物園だ。桜の名所でもあって、残念ながら三分咲き程度だったが花も見られた。一番心に残ったのはキリン。キリンは高いフェンスの向こうに長い首を伸ばして、桜の枝についた蕾をこれまた長い舌でしごきとっていた。キリンは背が高いだけに背伸びの伸びしろもすごくて、びっくりするほど遠くまで届くのである。きっとあの枝が花をつけることはないだろう。

昼食のあとは横尾忠則現代美術館に行った。「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」という企画展をやっていた。横尾忠則にはまったく詳しくなくて、あのギラギラした色彩でデザインをするひと…という印象だったのだが、数十枚も展示されたY字路の絵画は、非常に繊細にストロボ写真を模写したのもだったので面食らった。Y字路の連作は故郷の兵庫県西脇市に滞在して新作に取り組んでいた時、夜にフラッシュを焚いて撮ったY字路の面白さに感銘を受けて始まったものだという。フラッシュを焚くとY字路の真ん中にある建物に光が反射して白っぽく写り、左右の道は暗闇に吸い込まれていくように暗く写る。そのコントラストはたしかに面白かった。なんというか、絵画の前に立つと自分が半分に分かれてそれぞれの道に吸い込まれていくような感じがするのだ。その自分たちはY字の道に沿って拡散し、二度と交差することはない。実写的な故郷での連作のあとはY字路そのものに興味が写り、滞在先や他人からの情報を元にした作品が増えるとともに、色彩の自由度やコラージュの奔放さが増していく。解説には「2つの消失点を保つY字路の構図は作品に安定をもたらし、土台となり、やがて自由な創作のプラットフォームとなっていった」というようなことが書いてあって面白かった。同じY字路を題材にしていることもあるが、同じ人が描いたとは思えないほど、タッチも色彩もモチーフもその時々で変わるのだ。「とにかくずっと作り続けている天才芸術家」という印象があったけれど、写真の模写に始まって変化していく一連の中に、長く生きてきた人の生っぽい顔から夢の世界の代弁者とでもいうような顔までが映り込んでいるようだった。

追記

などと言っていたら、3/31の夜遅くにパンダのタンタンが亡くなったという報道があった。「タンタンがいなくなったらこの大量のパンダショップとパンダグッズはどうなるんでしょうね」などと話していたのに現実になってしまった…。

@hachimoto8
なるべくしょっちゅう書く/始めないし終わらない/これで完成でいいや