片道2時間半かかる仕事先に行く日だった。移動中はだいたい本を読むかオーディブルを聴くかラジオかで時間を潰している。昨日は日本語ラップの曲をあさってみた。一昨日ぬいぐるみにラップしてもらったら※即興の割に韻が踏めて楽しかったからだ(脱線と余談:今、この一文を書くのにかなり迷いが生じた。「ぬいぐるみにラップをさせたら」「ぬいぐるみでラップをしたら」いずれもぬいぐるみがしゃべるという行為?現象?の一面しか照らしていない。何度か書き直したのち、両者の意志が混じり合う「してもらったら」がマシな表現に思えたので、そうした。でもこれもちょっと実感とズレがあるんだよな。ぬいぐるみがしゃべるって一体なんなんでしょうね)。でも昨日調べた程度では少なくとも好きなラップに当たらなかった。ラップって大いなる成功への道筋をたどる途中の私、というストーリーに落とし込まれていることが多くないですか?その過程に楽曲のリリースや副業のための出店などの小さな成功、良き仲間良き家族との出会いや結婚出産などプライベートの充実、ステージに立ち続ける努力、ときには挫折、仲間の喪失などがある。大いなる成功はアーティストとして十分な稼ぎや知名度を持つことだったり、もしくは逆張りしてただ自分の思うラップを続けて生涯を送ることだったりするのだが、基本的に社会的な野心と他者評価への意識と向上心に満ちていてガツガツしている。そういう曲を聞いてもっと頑張ろうと思える日もあるのだが、昨日はまったくハマれなかった。もっと根暗なオタクのためのラップはないのでしょうか?と思って文化系な雰囲気のラップを探したらPUNPEEはかなり好きで、「お嫁においで 2015」はグッと来た。それでも今の気分には合わなかった。みんなリリカルすぎるしエモーショナルすぎる。人間がいすぎる。違うんだ。そうじゃないんだ。根暗なオタクとすらちょっと違って、今聞きたいのはもっと閉じた、もっとliminalな、信号機の明滅とか道に落ちてるゴミとかについてのラップであり、それらを感受する主体は必要だが幽霊のようでよく、生き物は登場してもいいけど庭の雑草とか蟻、哺乳類だともうウェットすぎてせいぜい鳥、くらいのあたたかみのやつなんだ。あと韻は固いほうがいい。音韻に奉仕することが目的化していて、固い韻を踏んでなんとかばらばらになりそうな自己を補強しているようなやつ、歌詞世界の背骨として韻が用いられているもの、技巧だけでハートがないってdisられそうなやつが聞きたい。あと自然音をサンプリングして(比喩としての)韻を踏ませるみたいなインストってないんだろうか?でもそういう味わいってもう短歌を探したほうが早いかも。短歌をビートとメロディに乗せて歌ってるくらいの趣のやつが聞きたいんだと思う。もしくは漢詩を今から勉強するか。そういえばスチャダラパーの「ヒマの過ごし方」はだいぶ好きな方のラップだ。ぼやぼやボヤいてるだけみたいな。
※ぬいぐるみにしてもらったラップ (を整えたもの。私の好みとは違う)
【オオサンショウウオ(MC G.S.)のラップ】
川から登場 オオサンショウウオ
みんなをアゲてく 叫べウオーッ!
小粒じゃねえぜデカいんだ山椒を
心のスパイスに やってこうよ
【オオサンショウウオがねずみ(MC N.Mouse)につけたラップ】
おれは陽気な〇〇〇ねずみ
垢をすするよ今日も寝ずに
目じゃないぜ某千葉のディズニー
マウスにゃ負けないよ恐れずに
オオサンショウウオは「ぼくは元々大きくて高貴だしかわいいからラップの世界では不利だよね。ねずみの方がちびでいやしいし汚くって成り上がり甲斐があるからうらやましいよ」と言ってねずみをイラつかせていた。しずインのフォーマットは行間がでかいので詩を書いた時に少々眠すぎる。