2024/04/01 この町で暮らした

hachimoto8
·

昼に同居人と昼食に出ようとしたら、ふたりの住人とでくわして思いがけず立ち話が盛り上がった。住居は遠方にあるが長く借りている人で、昔の話をよく知っている。

工事で共用部に積み上げた物をどかすように言われていた例の隣人は、なんと大変な仕事をやり遂げた。期限日の夕方時点ではあまり状態が変わっていなかったのに、朝見ると物はきれいさっぱり片付いていた。夜中までかかって物をすべて家の中に引っ張り込んだらしい。いくらかは引取業者に持っていってもらったようだ。通路はすっからかんになって、本来はこんなに広かったのかと驚くばかりだ。空気が明るくなったような気さえする。立ち話ではこの隣人の人となりについても聞くことができて、ここで詳述することは避けるけれども、ともかくそれを知った今となっては、物をどけたのが彼にとってどれほどの難事業だったのかようやく想像できたような気がする。

午後は仕事に集中できた。久々によく働けて気分が良かった。それでふと思いついたことを同居人に夕食の席で話してみた。「隣人たちのライフヒストリーを聞き取りたい」というものである。今日の立ち話はとてもおもしろかったけれど、このままではよもやま話としてただ雲散霧消していくばかりだ。私は昨年、『大阪の生活史』というライフヒストリーの聞き取りプロジェクトに聞き手として携わった。堅苦しいインタビューという感じではなく、おしゃべりの延長のような雰囲気で、その人の人生や生活のありさまについて聞くのだ。「あなたにとって大阪とは?」なんて大仰な質問より、「喫茶店で働いててんけど、常連客がいっつもややこしい注文してきて…」というようなごくごく細部の話が実に面白く味わい深かったりする。「この場所」に区切って聞き取り調査をしたら、なかなかおもしろいのではないだろうか。同居人もとても乗り気で、ぜひやろうということになった。ゆくゆくは1冊にまとめたいけれど、最初はまず聞き取りに応じてくれる協力者を見つけて、その人へのインタビューを編集して、小さなコピー本小冊子にまとめる、というごくごく小さな単位を目指したい。

@hachimoto8
なるべくしょっちゅう書く/始めないし終わらない/これで完成でいいや