病院の待合室の雑誌コーナーにバードウォッチング専門誌の『BIRDER』が置いてあって、初めて読んだけれどすごく面白かった。2023年5月の号だったからちょっと前なのだが、初心者向けの鳴き声聞き分けガイドがあったり、鳥の後ろ姿に特化した写真の特集があったり、掛川花鳥園の出張ページや種名の語源コラム、イラスト、録音機材の紹介など色んな企画が充実している。バードウォッチングに向いたツァイスの双眼鏡ってちょっと欲しくなるけど18万円するんだとかそういうのを見ているだけでも楽しい。写真家やイラストレーターもたくさん活躍しているが、鳥の知識が豊富な上に撮影や絵画の技術にも優れているなんてすごい世界だなと思う。
特に気に入ったのはBIRD CHALLENGE by Jizzというクイズコーナーだ。Jizzというのは、「鳥の大きさや形、色、模様、姿勢、動作などの印象と、生息環境や観察場所の情報を組み合わせて識別すること」らしい。要するにバードウォッチングでは理想的な環境で鳥を見られることは少なくて、たとえば逆光になった枝の間を飛び回る一瞬の姿のような、限られた手がかりしか得られない局面が多くある。そういう時の全体的な印象をJizzというようだ。この投稿コーナーでは枝の間から見切れている鳥のような不完全な写真が出題されていて、撮影場所付近の環境や季節などの情報も簡単に添えてある。解答は次号で発表される。そういえば父の知り合いにバードウォッチャーがいて、その人は歩きながら会話をしていてもパッと視界をかすめて飛んだだけの鳥影を一瞬で振り返って「あれは〇〇ですね」と名前を言うのだそうだ。
なんでJizzっていうんだろうと思って検索したら、俗語で射精のことだと出てきて面食らった。が、さらに検索したら戦闘機乗りの間で言われた「General Impression and Shape」略してGISがその後Jizzとなり、バードウォッチング用語としても使われるようになったらしいことがわかった。戦闘機乗りは判断を誤れば死に直結する状況で、機影や飛び方、エンジン音など五感をフル稼働させて敵味方を判断していたであろうから、きっとすさまじい直感を発達させた者が多かっただろう。なんで綴りが変わったのかはわからないけど、兵士たちの間でふざけている間に広まったのかな。