2025/05/17 東京②雨と北野勇作さんのイベント

hachimoto8
·
公開:2025/5/25

ギャラリー猫町に滞在して2日目の土曜日。谷中を散歩するつもりだったのだけど、勢い良く雨が降っていてコインランドリーを往復しただけでずぶ濡れになる。その後無茶な入稿と旅疲れがドッと出たのか明るいうちはずっと横になっていた。脳みそがゼリー寄せになったみたい。普段はしょっちゅう寝込むけど、旅行では精力的に動けるんだよな……などと思い込めたのは昨日だけで、旅行先でもふつうに寝込む。それでも読書は捗った。懸念していた小冊子が夕方に納品され、現物を見て一安心。

北野勇作「100字の無限 マイクロノベルのヒミツ」

夕方から開催された北野勇作さんのイベントにもぐりこむ。以前犬と街灯(大阪・庄内)でも似たイベントがあって、内容自体はおおむね聞いたことがあったけれど、北野さんの講座がすごいのは「私も書いてみたい」と自然と思わせてくれるところだ。なにせ100字だし、題材は日常から取ればよく、ショートショートのようなきれいなオチは必ずしも必要ないというんだから。一日に何度も軽いアウトプットを完結させる。そこから短編や長編の種が生まれればめっけものだし、生まれなくたって別にかまわない。見返すことがなくても写真を撮るのと同じで、100字を完成させること自体に楽しみがあるから。

文章は書き出すまでのハードルが一番高い。ほぼ百字小説はその障壁をできる限り低くする。ぐしゃぐしゃと手書きした手のひらサイズのノートを見せて「どうせ後で書き直すんやから」と北野さんは言う。すごい、やってみたい、と思いつつ、前にやったことのある私は、それがけっこう難しいことも知っている。特に私のようないつでも一筆書きの一発書きというタイプの人間には。坐禅を極めた人が「簡単ですよ。心を静かに、呼吸を数えて座っていればいいんです」というのに似た身体に通じる難しさがある。

何度か試して挫折してみてわかったのは、たぶん北野さんは小説のスイッチを常に「甘押し」しているのではないか、ということだ。小説を書く人にはなんとなく伝わるのではないかと思うけれど、小説を書いていると現実世界からふとレールが外れて想像の世界に突入することがある。かといって目の前の世界を無視しているのではなく、むしろ想像は現実から惹起されてくる。のだが、私などはかなり追い詰められないとこの感覚が得られない。で、北野さんはこの感覚が常に「甘押し」されているところが稀有であると思うのだけど、どうだろう。

歩数は4,474歩。

@hachimoto8
なるべくしょっちゅう書く/始めないし終わらない/これで完成でいいや