越谷レイクタウン
朝早く東京に着いて即埼玉県に入り、日本一大きなイオンモールのある越谷レイクタウンに向かう。ずっと書いてる長編小説に半ば公営の巨大ショッピングモールが出てくるので、一度見ておきたかった。最初に南越谷駅前の小さな商業施設内に併設された図書館で当時の資料など探すが、90年代初めの市のPR誌くらいしか見つからない。市立図書館まで行けば資料がありそうなのだが時間がなく断念。そのままレイクタウンへ。
武蔵野線の車両扉には巻き込み注意のシールにウサギのぬいぐるみがドアに挟まれて痛そうに涙を流し、綿をはみ出させているイラストが添えてある。「ウサギは挟むとかわいそうだが、ウサギのぬいぐるみは挟まれてもOK」という冷静な判断を感じ取る。
レイクタウンはとにかくでかかった。イオンモールのそばに大規模調節池という洪水を防ぐための池があって、周囲は親水公園になっている。芝生に寝転びたくなるがよく見ると犬の糞がけっこう落ちているから油断ならない。ぐるっと一周歩こうとしたが大きすぎて無理だった。平日だから散歩の客がぽつぽついるくらいだけどバーベキュー施設などもあるようだ。観光協会の事務所になっている水辺のまちづくり館を訪ねたが常設の展示などはなく、自然活動のポスター発表があるくらい。後で職員の方が市のWEBページで参考になりそうなところをメールで教えてくれた。
越谷イオンレイクタウンはファミリー向けのmori館、若者向けのkaze館、アウトレット館の3館からなっている。各館はブリッジでつながれているが、なにせでかいので空港みたいだなと思う。地元にだってイオンモールはあるわけで、イオンレイクタウンもただそれの拡大版だと言ってしまえばそうなのだが、小説の参考にしようと思って見ているといろいろ面白い。たとえばいくら探してもマップがなくて、アプリで見ることが前提になっていること(インフォメーションセンターに行けば一応紙の地図はある)。デザインの違いも面白く、mori館には偽の木漏れ日天井、イミテーションの植物、謎の巨大偽岩があり、kaze館は天窓を利用した明るい吹き抜けが基調となっている。ショッピングモールのテーマパーク性は『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』(大山顕、東浩紀)などで言及されていた。イオンレイクタウン全体のアイコンとして黄色い水鳥(カモ?)がいるのだが、植栽にそってオブジェが潜んでいたりするのもディズニーランドの隠れミッキーぽい。
後日18日のイベントでお会いしたオカワダアキナさんからレイクタウンが地元民にとってどういう存在かなども聞き、とても参考になった。私もニュータウン近辺の出身ではあるのだが、当時は道路沿いの専門店やスーパーが生き残っていたし、ダイエーやナガサキヤが滅びイオン系列が拡大していく過渡期に育ったこともあって、地域の中心にドカンとイオンモールがある感覚はいまいちわからないのだった。
上野
満足するまで歩いたのでイベント会場である谷中のギャラリー猫町へ。上野で降りてアメ横を通りつつ歩いて向かった。アメ横は聞いていた通り珍しい果物や買い食いできそうな食べ物を売っている店が多い。お客はみんな店の表に卓を出して飲んでいる。おじいさんでも派手な帽子をかぶっていたり芸人風の身ごなしだったり、なんというかパッと見でどういう人か(どういう人に見られたい人か)がわかりやすい印象を持った。それがおしゃれってことなのかもしれない。吉池に入ってみたら、大吟醸の酒粕を餌に養殖した「よっぱらいすっぽん」なるものが生きたまま売られていた。
上野公園で完全に体力が尽きてベンチで1時間近くへばる。途中でミロ展や蔦重展のお知らせを目にするが朝から情報過多でもう新しいことを知りたくない。手持ちのお茶とお菓子でなんとか元気を出して歩き出した。
上野公園は観光客が多くてにぎやかだったけれど、谷中はお寺が多くて、墓地もあったりして、やっと気持ちが落ち着いてきた。大阪でいうと四天王寺前夕陽ケ丘のあたりにちょっと似ている。道が細くて複雑で坂道が多い。
ギャラリー猫町
石垣の続くあたりに階段があり上がるとギャラリー猫町だった。またあとの日記に書くけれど、猫町に滞在させてもらえたことは本当にありがたかった。階段のふもとに白い猫のオブジェがあって、視線をたどると突き当りの幼稚園の犬のオブジェにぶつかるのは、何かの偶然だろうか。古生物のレリーフがついた看板や「猫町」の店名を背負った猫の飾りなどかっこいい。
ちょうど「猫町文庫」の企画展が始まったところだった。26名の作家が好きな本を選書し、それにまつわる作品を作るというもの。本、猫、というなんとなくのくくりがあるけれど、表現手法がさまざまなのでものすごく多様な感じがする。小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』から、リトル・アリョーヒンと猫のポーン、ミイラの肖像画があって気になった。岸波龍さんの「積読亀」という本を甲羅に乗せた亀の立体作品がかわいかった。
もうすっかり体力切れなので、店主の箱崎さんと夕飯を食べたあとすぐに眠ってしまった。歩いた歩数は20,842歩。