体調はまあまあ。しかし起床が遅れて朝ごはんも食べる気にならず、日記を書き終えると10時半を過ぎていた。昼になってから街へ出かけてまずは昼食を食べた。定食のご飯で大盛りを頼んだら男性の店員が茶碗にすりきり一杯のご飯を持ってきて「おや…？」と思い、瞬殺して大盛りご飯のおかわりを頼んだら女性の店員がこんもりと山になったご飯を持ってきたので、これがネットでよく聞く女性だけ定食のご飯減らされ問題かと思った。これまでも減らされたことは何度もあった気がするけど、だいたい一人で食べるし比較対象がなかったのではっきり目に見えたのは初めてだった。やよい軒などにあるご飯おかわりマシーンはサーバーから米を「べっ」と吐き出す姿に毎回気が滅入って笑ってしまうが、食べる方がコントロールできるという点では良いシステムだ。あの嫌悪感の根っこにあるのは、米は粗末に扱えと教育されてきたのに、食事を安価に提供するための合理性がそれを否定しているというところだと思う。でもどうだろう、あのサーバーって犬や猫の自動餌やり機にも似た仕組みのものがあるが、犬や猫も「さすがにないわ（笑）」とウケているのだろうか。人の手から食べたがる個体は一定数いるようなので、提供のされ方による好き嫌いというのはある気がする。
週末、人に会う約束があるので祇園の亀屋清永に手土産を買いに行った。買い物を終えて店を出たら、軒先になんだか茶色いふわふわした物が置いてあって、よく見ると清浄歓喜団のぬいぐるみだった。
清浄歓喜団というのは供え物に使われる揚げ菓子で、亀屋清永だけが作っているらしい。一度大阪府池田市の大聖歓喜天で捧げられているのを見たことがある。たぶん日持ちさせる意味もあるのだろうが、本物は巾着のような形でカチコチに揚げられていて、お菓子というよりは焼き物とかおもちゃのように見えなくもない。軒先のぬいぐるみは、おそらく本物にあるきゅっと細く立ち上がった首元を再現するのが難しかったのだろう、まんまるに鎮座していてどちらかというといなり寿司のように見えたが、それでもとてもかわいかった。手作りらしい趣があり、勝手な想像だが仕事のために作ったというよりは、作りたくて作ったものを置いたという感じがした。ぬいぐるみに顔はなく、働くぬいぐるみbot（Twitter）でいうところの「意思なし」のぬいぐるみだったが、その上に貼られたポスターには顔も手足もある歓喜天のイラストがポーズを決めていた。お店の人が商品に素直な愛情を向けている感じがする。
物の顔で思い出したのだが、オモコロの「物にも「顔」があるじゃないですか？」という記事がすごく面白かった。
身近な物の写真を撮ってこっちが顔ですよね、とか言っているだけのシンプルな記事なのだが、幼い頃に感じていたそのままの感覚が書かれていて驚いた。この記事は物への眼差しが突如自分へ反転して劇的なラストを迎えるのですが…。子どもの頃は物にも自然にも顔があるし、おまけに話しかけてくるので大変だった。人間よりも物や環境の方がよっぽど多いから人間と付き合うより比重がでかかったのである。その感覚は成長するとともに減退して、というよりチューニングを外す術を覚えたといった方が正しいが、しかし人よりはかなり多く持っている方だと思う。面白いことにストラテラ（アトモキセチン）を服薬しているとこの感覚は消えてしまうようだ。服薬中にそのことに気づくのは難しいのだが、断薬すると一週間くらいで車や家々の飾りやつむじ風にまかれた落ち葉などが「ひゅーん」「やーやー」「わー」などと騒ぎ始めるのでそれとわかる。脳が覚醒すると消えてしまうっていうのは面白い。このペンギンというライターさんの記事には「なぜイトーヨーカドーに入ると絶対「夜」になるのか？」というのもあって、こちらもすごく面白かったから前に読んだのを覚えていた。ファンだ。
同居人が1週間ぶりに帰ってきた。コナラの葉みたいに周囲がギザギザな大ぶりの葉を何枚か持って帰ってきたので何かと聞いたら、タラヨウという木の葉だという。表はツヤがあってやや肉厚で、裏はほんのりと白っぽい。裏面を引っ掻くと跡が黒く浮き上がる性質があり、昔は経文を書くのに使ったそうだ。郵便局の前に植えられていたりするらしい。鍋が煮えるのを待ちつつタラヨウを試してみようといって、同居人が葉の半分に「お料理ありがとう」と猫の絵を書いてよこしたので、「冬はお鍋に限るね」と熊の絵を添えて返した。葉脈のある裏面に書くのは意外に難しくて、自然文字数は限られてくる。10文字くらいが限界だ。10文字しかやり取りできないSNSがあったらどうだろうと考えた。ぎゅっと凝縮した直截なメッセージになりそうだが、悪意もやはり凝縮されてしまうだろうな。