同居人が琵琶湖へ魚を捕りに行くといって出かけ、ニゴイを持って帰ってきた。ニゴイは顔がニュッと長い馬面の魚だ。それ以外に琵琶湖近くの物産店で買ったという半助と、鯉とマスの南蛮漬けもお土産に買ってきた。
半助というのは私も知らなかったけれど、うなぎの蒲焼の頭の部分のことらしい。名前の由来は、端切れ的な部分で安いので昔は1円の半分の50銭で売っていたとかいくつか説があるようだ。すっかりタレがしみついて黒っぽくなっているから、身構えるようなグロテスクさは一切ない。かじってみるとすごく味が濃くて、頭1つで御飯が1杯食べられそうだった。ぱくぱく食べるものではない。ふと、鰻屋の子どもは毎日のおかずに半助が出るのかなあ、などと考えた。食べ物の専門店をやっている家に生まれた子どもが何を食べているか、何が好物か、といった話題に興味がある。たとえば以前、高級な牛肉専門店の三代目の人が、「うちでは甘辛く炊いた牛そぼろをトーストに塗って食べていた」と言っていて驚いたことがある。またラーメン屋に入ってラーメンを待っていた時、親子連れが「ラーメン屋のところの小学生の息子が、給食にラーメンが出たけれどちっとも食べなかったらしい」というような噂話で盛り上がっているのを聞いたこともある。給食のラーメンを拒絶した子どもがどういう心境だったのか、家でさんざん食べているから食べたくないと思ったのかもしれないし、こんなものはラーメンとして出来損ないだ、などと家業へのプライドの萌芽のようなものを感じたのかもしれない。真相はわからないのだが、何かしらの屈託を感じて心惹かれるものがある。