2024/02/20 霧

hachimoto8
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日課時計に使おうと買った24時間時計のムーブメントが、ようやく届いた。元々の商品ページには2日後の11日に届くと表示されていたのだが、買った途端に「早くて土曜日(17日)」と変わり、さらに「配達が遅れています」となって、9日遅れでやっと届いた。中国からの配達になることには薄々気づいていたが、それにしてもいい加減だ。自分のペースで暮らしていくための日課時計なのに、そのムーブメントの到着が大幅に遅れたことは何か皮肉な予兆であるような気がする。

朝から仕事に出かけたが京都から奈良までずっと霧が濃かった。2時半に目が覚めたが大して仕事も進まないまま明け方睡魔に襲われ、ぎりぎりまで寝て悪夢を見た。留学先で純粋に音楽を楽しむためにクラブイベントに行ったのに、実態は素行の悪いアメリカ人たちのドラッグとワンナイトの会場で、おまけにすぐおしっこがしたくなり何度もトイレに行くのだが、ボーリング場のようなレーンが何列も並んだ仕切りのないトイレで足首まで水につかってしゃがんで用を足さねばならないという悪夢だ。結局朝ご飯も食べずほとんど部屋着そのままのような服装で家を出た。すごく蒸し暑くて、コートを着て出たらインナーが汗でびしょびしょになってしまった。日の当たらない寒い部屋でデスクワークをするのに最適化した部屋着なので、歩いたり暖房の利いた場所に行ったりするとすぐ暑くなるのだ。

帰りにカフェで仕事をして進みはまあまあだったが、帰ったらぐったり疲れてしまった。月に7回くらい往復5時間かけて奈良に通っているのだが、どうもこの仕事は移動でひどく体力を奪われる。オーディブルを聴く時間もたっぷりあったので、平野啓一郎『空白を満たしなさい』を下巻の最後まで聴いた。幸福の絶頂で自殺して3年後に生き返った男が自らの死の真相を探る、という面白そうなあらすじなのだが、突如途中から明確に作者が提唱する分人主義についての啓蒙的な内容になるので、「ああ、その話ですね」とどうしても思ってしまう。でも面白かった。

分人主義はその人ごとの個性や偽りの自分、本当の自分があるのではなく、家族といる時は家族といる自分、職場では職場での自分、恋人と過ごす自分というように、人はみな関係する人や場面場面の数だけ異なる自分を持っているという考え方だ。それは結構納得感があるし、魅力的な考え方だと思う。そういえば我が家ではぬいぐるみがしゃべるが、彼らが自由奔放に語りだして止まらないのは私と同居人の両方が揃っている時限定で、自分一人の時はそんなにしゃべらない。話せなくはないが、ちょっと心のモードを意識して変える必要がある。同居人が一人でいる時はどうだか知らないが、似たようなものだろう。何度かぬいぐるみを外へ連れ出して、理解のある人と会わせたこともあるが、振る舞いはどうにもぎこちないものだった。そう考えるとぬいぐるみたちのキャラクターは同居人といる時の分人であり、しかも同居人と共有された分人、といえるかもしれない。

@hachimoto8
なるべくしょっちゅう書く/始めないし終わらない/これで完成でいいや