2024/04/23 鳥の大群

hachimoto8
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遠方で取材の仕事があった。現場は体育館のようなところで、そこに大勢の人が集まってくるのだが、キュッキュッという靴音が人数分×2の分だけ鳴って、うるさいことこの上ない。鳥の大群の真ん中に放り込まれたようだった。ゴムの靴底がニスの利いた床に擦れて出る音は他の場所では聞かない独特のもので、中学や高校の頃を思い出す。よくこんな騒音のただなかにいて平気だったなあと思う。いや、平気ではなかったかも。頭がぼーっとしてしまって、音の分厚い膜に包まれてひとり取り残されたような感じだったかも。価格や入手しやすさが考慮されてあの床あの靴に落ち着いているのだろうけど、あのすさまじい靴音は学校生活の快適さをいくらか損ねているのではないか?と思う。こないだ訪れた学校でとある音楽イベントがあって、演奏場所から少し離れたところに椅子が何脚かあり、数人の生徒が参加せずに座って見ていた。それぞれに耳栓やイヤマフをしていたから、おそらく聴覚過敏のある生徒への配慮なのだろう。ちょっとはいい時代になったのかな、と思う。でもどうだろう、「配慮される側」として視覚化されるのは、それはそれで本人は嫌だったりするかもしれない。

女子がズボンの制服を選べる学校が増えてきているのもそうだけど、制度で許されているとはいえ少数派ではあって、選べることでかえって差異が目に見えることがある。そもそも旧来の制服だって、家の経済状況にかかわらず差のない格好で生活できるという狙いもあっただろうし。差異をそしるのは良くないことだという了解が集団内で取られていないときついだろう。私は小学校まで数えるほどしかスカートを履いたことがなかったから、中学のセーラー服を初めて身につけた時のぎょっとした感覚を今でもよく覚えている。強制的に6年間スカートを着せられたせいなのか、今はそこそこの頻度でスカートを履くようになった。でも、もし選べたなら、中学でも高校でもズボンで通したと思う。ズボンの制服で楽しそうに歩く女の子たちを見る時、ズボンにしたいととうとう言い出せなかった子や、どちらも選びたいけどお金がかかるから諦めた子のことを同時に想像する。

@hachimoto8
なるべくしょっちゅう書く/始めないし終わらない/これで完成でいいや