仕事の帰りに100均でスコップを買って、河川敷でホタルミミズを探したが、見つからなかった。寒い時期に覆い種で11月~5月に見られるそうだけれど、さすがにちょっと暖かくなりすぎたかもしれない。地面に目を凝らすとミミズの糞塊はたくさん見つかる。ぼこぼこした粒が山になっている。ホタルミミズはごく小さいので糞塊も顆粒ダシのように小さいということなので絶対に違う種類だろう。しかし試しにそこをひっくり返しても、ホタルミミズに限らずミミズの姿を1匹も見なかった。晴れが続いていたせいか地面が乾いて締まっていてスコップがなかなか入らない。お天気が良いのでミミズ探しにぴったりの日だと思ったが、ミミズからするとさっさと土の奥にひきこもって寝ていたい日だったかもしれない。
同居人と夕食の後に古典を朗読しあうルーチンが続いていて、一昨日から『谷崎潤一郎訳 源氏物語』に入った。谷崎は3度も源氏物語を訳しているそうで、我々が読んでいるのはその3度目の全集である。昨日読んだのは2巻目の「帚木」だ。前半は源氏と友人たちによるボーイズトークで、女はああいうのがいいとかこういうのはだめだとか、上中下の品があってとか自分勝手で結論も出ない話を延々ぐだぐだやっており、後ろから頭をはたいてやりたくなるのだが、紫式部がいかなる人間観察でこれを書いたのか、カフェでイキった高校生が話していそうな雰囲気でとても見事だ。後半の空蝉とのエピソードははっきりと性加害で、源氏が見ず知らずの女のところに上がり込んでキョトン顔で「前世にそのような縁があったということでしょうか」などとのたまっているのは昨今のストーカー殺人事件なども頭をよぎる恐ろしさなのだが、よく読むと空蝉の戸惑いや怯えも克明に描写されている。女性ももちろん当時の社会常識にとらわれているものの、恐怖が引き起こす体の反応などはとてもリアルだった。登場人物が多く読むのが大変だったのだが、その後で青空文庫の与謝野晶子訳を参照してみたら、こちらの方がずっと平易で現代的でわかりやすいのに驚いた。といっても古典を読むなら古典らしさにひたりたい気持ちもあるから、どちらが良いかは好き好きだろう。