X(Twitter)は居心地の悪いところにどんどんなっている、というのはXに触れている人の大半は感じているところではないかと思うのだが、それでもXをやめられない、Xでつながっているフォロイーフォロワーがたくさんいる、やめたところで他がないと思って渋々使い続けている人が多いのではないか。自分も、投稿はほとんどしなくなったが、見ることだけはまだスッパリ辞められてはいない。そこで、今自分がメイン拠点としているBlueskyにおいでよと誘導するような、XサゲのBlueskyアゲ記事を書こうかと思ったのだが、それはさすがに恣意が過ぎるような気もしたので、もっとフェアに(?)、端的に今のXの最悪なところを連ねることにした。それだけなら事実だけだからね!(2024年8月現在)
・イーロン・マスク
まず、ド頭からトップの否定すぎるが、イーロン・マスクが厳しい。投稿の品の無さも、その自分勝手な振る舞いも、たまに上げるXロゴを使ったブランディングもくそもない意味の分からない動画も、露骨にトランプを支持するような姿も。この人間性に思想面が握られているサービスを使うというだけで、Xに居たくない理由の半分以上くらいあるのが自分の感覚なのだが。それとこれとは別、と言えるだろうか。
Twitterを買収して当初は、それまでのTwitterも不透明なシャドーバン、あいまいなインプレッション評価基準など不満がよく呟かれていたので、買収後、言論の自由至上主義者として取締役を一斉に追い出すなど改革的な姿勢、イーロン自身がツイ廃でもあるので、残ったエンジニア達との和気あいあいとした雰囲気への変化を思わせるなど(それはホモソーシャル的でもあったが)、Twitterがまたオープンで活気ある場所に戻っていくかもしれないという、かすかな期待があったことは否定できない。だが、そうはならなかった。当初は「Twitter」ブランドはそのまま残すというようなことを言っていたような気がするのだが、結果的にはイーロン本人の昔からのこだわりである(一番カッコイイと思ってるアルファベットらしい)「X」への集約、スーパーアプリ化への野望を優先した。Twitterという膨大なユーザーリソースをそのまま転嫁し、利用して、既存のユーザーが誰も求めていないような、自分の理想とする中央集権プラットフォームへの足がかりにしようとしている。そのくせ、Xの経営状態を改善するという名目のもと、結局インプレッション評価の仕組みなどは改善するどころかより強固に、ユーザーを人気トピックに集中させ話題の分散を抑制するような方向に進んでいる。(その既存の仕組み自体がどういうアルゴリズムになっていたかをオープンにしたことは、ある意味では良かった動きかもしれない)
・おすすめTLのデフォルト化
上のイーロン・マスクの項でほぼ大まかにはあそこに居られない理由を述べたので、あとはもうアルゴリズムに関する蛇足のようなものなのだが、一番よく言われるXのキツい点といえばやはりおすすめTLだろう。偏ったアルゴリズムと、X側の経営的都合によって、「あなたへのおすすめ」というポーズをしたトピック集約誘導型タイムライン。極端な、声の大きいポストが可視化されやすくなるエコーチェンバー加速装置。昨今ではこのTLで、常に誰かが喧嘩している、いつも差別的ポストが流れてくる、という不満がよく共有される。個人ごとにカスタマイズされたTLのはずなのに、なぜ皆同じ不満を感じるのか。おそらくだが、久しぶりにおすすめTLを読み込んだ最初の表示では、ここ数時間でX全体でトレンドになっているものを大雑把に表示し、数回リロードすることによって、やっと自分のフォローしているTLと近い周辺からカスタムされたポストが表示されるようになる。その一回目のリロードのポスト内容に反応してしまうと、以後「そういうのがお好きなのね」というおせっかいアルゴリズムに変化していく。人は、どんなに興味ない野次馬的な話題でも、目の前でちらつかせられると続きが気になってしまう。そうやって人々は特定の話題に吸い寄せられ、大きなサークルの中のワンオブゼムとして単純化されていく。
おすすめTLなんて見ずに、フォローTLだけ見ればいいというのはその通りなのだが、一度アプリなどを離れたら、またすかさずおすすめTLを表示してくる。そうして結局、自分だけがフォローTLを見ていても、どうせ自分のポストはフォロワーのおすすめTLの評価競争の中で不可視化されてしまうんだろうなという絶望感に見舞われる(あるいはアルゴリズムに合わせてSEO的に積極的に評価競争に身を投げ出すか)。この仕組みは全て、スーパーアプリへの集約化への野望、そして人間の欲望のブースト化こそがX社にとって都合がよいという意図によって設計されている。最大公約数的に、「みんなが見てるものだけを見ろ」。
・有料プランに入っている人を優先的に表示
さらにここからアルゴリズムの微に入り細を穿つ話で恐縮だが、これは分かりやすい。有料プランであるXプレミアムに入っている人を優先的に他人のおすすめTLに表示する。お金によってインプレッションを買うのだ。別に全てのネットサービスは無料で提供すべきだなどとは思わない、ただ「ソーシャルネット」がそうやって、個人個人が趣味や思想で繋がる場所ではなく、ただの経済原理がそのまま反映された場所になっているのだということを、改めて認識させられるだけだ。それは、「正しさ」よりも優先される。
・URLを貼るとインプレ評価が下がる
・外部SNSへのURLは特に評価が下がる上に遷移も遅い
かつてTwitterはインターネットのハブ的な存在になるとされていた。そのTLを見ているだけで、様々な最新情報が流れてくる。好きなジャンルの最新情報から、災害情報から、今日の晩ごはんまで。Twitter以前までは、最新ニュースなどを得るために、ブログやニュースサイト等から発信されるRSSを集約し一覧して見ることのできるリーダーやはてなアンテナといったサービスを使って、更新情報をキャッチしていた。Twitterが登場し普及して以降、RSSリーダーは役目を終えた(Google Readerの終了が一つの節目だった)。ニュースも、ブログの最新記事も、フォローしている人たちのご飯も、全部が一つのTLでリアルタイムに流れてくるカオスの奔流。そのタイムラインを通じて、多方面のインターネッツへ多動していく。あちらこちらへサーフィンし、顔を出し、情報を得て再びタイムラインに戻っていく。自分の興味関心を主体に構成されたそのメインストリートで、勝手に流れてくる最新ネタを享受できる仕組み。それがTwitterの面白さでもあった。
だが今のXではそれは推奨されない。URLを貼っただけで、他人の「おすすめ」からはやんわりと除外される。インターネットのハブになろうなどという思想はとうに失われている。ずっとXだけを見ていなさい。そこに広告があるから。広告があること自体を否定はしないが(ないに越したことはないが)、Twitterに求めていたハブとしての価値、多方向のインターネットへ渡るための架け橋としての価値は、X自ら要らないものと判断されてしまった。
さらに、外部URLの中でも特にXが排除しようとしているのが、ライバルとなるSNSのURLである。instagramは長年リンクを貼ってもリンクカード(サムネイル)を作成することを拒否されているし、Twitter買収以降、移行先のSNSをどこにするかなどの話題が興隆したが、その際にXは大変手際よく、Bluesky等の新興勢力のURLに対する抵抗をアルゴリズムに組み込んだ。それらのURLを貼ったポストはインプレッションがガツッと下がるし、そのURLをクリックしても、遷移にやたらと時間がかかる。外部SNSはXよりも重い、というイメージを与える。これが全てわざとだというのだから、なんという嫌らしさだろう。既存ユーザーが多い、というだけの強者による、単なる弱いものいじめにしか見えない。このあたりの手の速さが、まさにイーロン・マスクという人間の性格を物語っている。自由な言論至上主義者とは?
・APIによるサードパーティ文化を殺した
Twitter APIを公開することにより、野良開発者の皆さんが、スマホ用の独自の機能を追加したTwitterクライアントを開発したり、有名なところではTwilogなどのwebサービス、ツイートを集計・統計して何らかの数値化や見える化などを行うサービスなど、APIを利用した研究やユニークな遊びの文化が、過去にはあった。今はもうそれが出来ない、いや、出来なくなったわけではないが、少なくとも個人の開発者が支払える範囲では、ほとんどのことが出来なくなってしまった。Togetterという法人が多大なAPI使用料を払ってなんとかTwilogを引き継いだのは記憶に新しいところ。API使用がそれまでかなりの範囲で無償だったことのほうが不思議といえばそうかもしれない。たしかにbotなどによって悪用されていたという面もあったかもしれない。しかしこうして、Twitter周りの文化を盛り上げていた仕組み自体を根本からひっくり返し、大きな収入源となる企業のみに絞るような窓口にしたという選択は、巨大化したSNSプラットフォームとしては当然の選択なのかもしれないが、これまでTwitterという仕組みの周縁で発明されてきた様々な社会的観測、ツイートを使ったインターネット的遊び心といった側面を全て終わらせることでもあった。もうXは、Xというアプリの上で遊ぶことしか許さない。
・TweetDeckを殺した
TweetDeck…それは、まさにもともとはサードパーティ製のPC向けTwitterクライアントだったが、公式に買収されTwitterの一機能となってからも、Twitterユーザーなら誰もが無償のまま、Xになったあともほんのしばらくは使えていた、自分にとってはTwitterのメインの風景でもあった存在…。と言っても、あまりピンとこない人も多いらしい。どうやら、世の中的にはそもそもPCでTwitterを見る人のほうが少なく、スマホの公式アプリ以外でTwitterを見るという方法自体、多くの人の意識からは徐々に消えていっていたらしい。僕はTweetDeckを残し続けてくれたことが、Twitter末期の最後の良心だと思っていた。メインTL、アクティビティ、リストなどをカラムで並べて表示して、リアルタイムで流れるツイート群をぼんやり眺めながら、むしろ眺めすらせず画面に表示だけしながら、本を読んだりする、という行為がこの上なく豊かなで落ち着く時間に感じていた。おすすめTLからも広告からも無縁だった。TweetDeckがある限りそこには原始的なTwitterの姿があったので、離れる必要性も感じなかっただろう。Twitterの経営が危ぶまれているという話が挙がったときも、もしTweetDeckの利用が有料となったならば、値段にもよるが喜んで払うだろうと思っていた。
結果的に言うと、TweetDeckは「X Pro」に形を変えて、Xプレミアムユーザーの為だけに存続している。だが、それは望んでいる姿ではなかった。従来のTweetDeckユーザーの中では「旧TweetDeck」こそが理想であり、「新TweetDeck」は似て非なるものという認識が共有されている。どこがどう違うかはここで細かく書かないが、明らかに見た目も使い勝手も改悪されてしまったのだ。そしてX Proも、新TweetDeckをそのまま継承している。旧TweetDeckはもう存在しない。
僕が今BlueskyからXに戻る気がないのも、この部分が大きい。Blueskyでは今、サードパーティ開発を公式に支持する姿勢と、TOKIMEKIなどの旧TweetDeckにそっくりの(むしろさらに高機能な)サービスが有志の開発者によって作られており、僕が一番落ち着く風景をそこに再現することができている。
・インプレゾンビ・・・
もはや日常光景になりすぎてすっかり書くのを忘れてたけど、もうあそこは、まともなコミュニケーションすら不可能な場所になってしまっているのでしょうか?アルファツイッタラーでもなんでもないので、万バズする側からのXの風景というのは理解できていない。そういう側から見たら、今のXも相応の面白さがある場所なのかもしれない。しかしそれにしたって、多数のインプレッションを得られることと引き換えにゾンビに群がられるのを受け入れるしかないって、一体どういうことなんだ。
と、Xの悪口をつらつら書いていたら5000字を越えてしまった。やはり悪口というのは人を饒舌にさせる。親しかった存在であればあるほど、アンチに回った時の勢いたるや凄まじいのだということを、ウェブサービス一つでこうも自分で感じるとは。
X最大の強みとして、人が多いということが挙がると思うが、たしかにそれは、単に公式から供給される情報を得たい、みんなが話題にしていることを知りたいという目的だけなら、その強みに頼っていいと思う。だが、テキストSNSとしての素朴な交流という体験を求めたいのならば、Xはもうかなりやりづらい場所になっているように思う。伝えたい言葉を伝えたい人に届かせるには、あまりにもノイジーになってしまった(イーロンは最近、動画SNSになりたがってるらしいし)。
きっとどのSNSでも、人が一定以上多くなると、アルゴリズムは自ずと求められていくのだろう。その時、どういうアルゴリズムを運営側が仕込むかによって、そのサービスの思想が重みをもってくる。ユーザーとしては、インターネットを楽しむ上で自分が何を大事にしていて何を奪われたら怒るか、その価値観が似ている人たちと寄り集まれることこそが、SNSで一番楽しく過ごすポイントなのではないかと思っている。というわけで、僕はBlueskyにいます!(結局アゲた)