「おーいたぁー」
「なぁ〜んや」
いつの間にか己の太腿の上が定位置になってしまっている。寝転びながら彼の友達であろう黄色の猫を愛で、ついでに己の意味もない呟きにもだるそうながら、それでも律儀に返事を返してくれる大分は今でもひどく蠱惑的に見えた。
どうしよう。やばい。かわいいな。
――――……思わず抱き竦めてしまいたくなるほどには。
でもそれを、その行動を許すほど己の理性は緩んでいないから。箍が外れるにはあまりにも非日常さに欠けている風景だった。
それでももう疾うの果てに諦めたはずの想いは中々すぐには収まりきらないみたいだ。
きっと届かないと知っているから。違うと分かっているから。
彼の笑顔を代償にしてまで、己の気持ちを伝えるにはあまりにも己は臆病であった。
(……こんな顔、アイツには見せられないな)
もう何度目になるか分からない溜息を吐いて、息を吸って、また薄らと、吐く。すると大分はきょとんとした顔で、抱き締めた猫と共にこちらを見てきた。