広島根|劣情ラムール

haj1mar
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整えぬまま寝てしまっていたシーツはまあ見るに堪えない乱雑さで、昨宵の酔態を思い出すには十分過ぎるほどだった。

そんな中でも朝の清んだ光に照らされる彼の肌はひどく美しくて、添えられたその髪までも光に透かしてみたくなりそっと柔らかな金糸を持ち上げるとそれはまた儚げに照り映える。

「、…ひろしま」

人間が慕情と呼ぶであろうこの細やかな情感を、己は祈りと呼んだ。

「――――……×××××」

ひどく身勝手で驕僭な心持をどろりと孕んだ短い五文字を密やかに口に出すと何故だか胸が晴れたような気がした。貴方も忘れているくらいが丁度良い。胸中で燻っている不安なんて決して知られたくはなかった。たった今独り言ちた言葉も貴方は気付くことなどなくきっと明日には忘れられ、思い返されることもなく枯れているだろう。

(……もう起きにゃあいけんかの)

軽く息を吐いたのち彼を起こさぬように閨を出て、思いっきり伸びをした。

@haj1mar
徒然に