―――…………恥の多い生涯を送ってきました。
不意に、かの有名な小説の一節を思い出したのは何故だろうか。
(私にもまだまだ恥なんてものは溢れていますがね)
数十年しか生きられない人間たちも面白いものを考えるものだ、とそう。
彼らの心内を透明な目で見るのは慣れたものだ。
一つ、ため息を吐いて。
何の気なしに声を聞きたくなった茨城さんとのチャット画面を開いた。
(あの人ならどう言うでしょうか)
唯一の恥は己を自分のものにしてしまったことだと淡く笑ってくれるだろうか。
薫る季節にどこか彼を感じた様な気がした。