『PAST LIVES / 再会』を観た。監督はセリーヌ・ソンという韓国出身でカナダ移住者。長編映画はこれが初にもかかわらず、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされている。パンフレットのイラストがとても良い。
韓国出身で12歳で海外移住する主人公ノラと、当時の想い人であったヘソン、現在のパートナーのアーサーの3人を巡る三角関係を、過去・現在・未来を、韓国語で摂理や運命の概念を示す「イニョン(縁)」(つまり、前世・今世・来世)という鍵語を中心に丁寧に描いていた。三角関係と言っても陳腐なそれ(西洋的、ファロス主義的な恋物語)ではなくて、他者の生を尊重し、受け入れることの話。
時間が映画の中心的テーマにあるため、映像もわかりやすく構成されていて、過去に向かう時は右から左へ、未来へ向かう時はその逆となっている。特に過去に思いを馳せるシーンでは、例えば車窓や鏡、ラップトップの画面などを通して、フレームに収められた写真や絵画のようなカットが入る。セリフは少なく、撮影そして俳優陣の表情による演技が素晴らしかった。
12歳、24歳、36歳の3つの時代構成とイニョン(縁)と、仏教的な十二因縁が根底にあって、それがキリスト教圏で評価されているのが面白い。ただ、日本人の私にはすんなり入ってる概念だが、彼らはどう感じているのだろう。実際、イニョンを米国白人であるアーサーに説明する際はかなり回りくどい感じになっていた(Reincarnationとまで言っていた)。
物語はメインの3人とも大変切ない気持ちを受け入れ、それぞれがそれぞれを肯定し未来へ歩みを進めるのだが、それを暗示する印象的なセリフが物語の中盤、ノラとアーサーがシェアハウスで出会うシーンで出てきていた。
Nora: You've got the worst room.
Arthur: Ah, right? I know.
こんプロでもこの映画に対し好意的に触れていたが、テーマはまさにBase Ball Bearの「逆バタフライ・エフェクト」とも重なっていて、やはり彼らとは「気が合う」なと感じる。