2024/5/10(金)
髙橋ミナミさんが出演される朗読劇『ネコたん!~猫町怪異奇譚~』を観劇しに久しぶりに池袋へ。なんだか色々あるようで特に何もない街。とりあえずジュンク堂に行って時間を潰した。
ボブ・マーリーの映画を観てからというものカリブ海思想に俄然興味が湧き、積んでいた中村達著『私が諸島である カリブ海思想入門』を読み始めている。冒頭から西洋中心主義の哲学、とりわけ存在論が徹頭徹尾批判されていて耳が痛いが重要な議論。著者による選書リストを参考にカリブ海文学を物色し(端の棚の下のほうに少ししかなかったのだけれど)、ジョージ・ラミングの『私の肌の砦のなかで』を買った。訳者改題が丁寧で文脈などを知れてありがたい。
それでも開演まで時間があったので、BRUTUSのジャズ特集で紹介されていて気になっていたKAKULULUというカフェへ。会場のあうるすぽっとと目と鼻の先だったのでラッキー。モダンなジャズを中心にレコードで流していて、人も少なく心地よい空間だった。Travis Sullivan's BjorkestraというNYのビッグバンドを知れた。
一応公演は続いているのでネタバレがあるという前置きをしつつ。
今回の朗読劇は萩原朔太郎の唯一の小説『猫町』の世界観を元にしているということで、個人的にはちょうど詩集『青猫』も読んだところでもあったので、当該書も読んで楽しみにしていた。
のだが、結果から言えばあまり面白い脚本ではなかった。冒頭こそ『猫町』からの引用で始まりその世界観を活かすのかと思いきや、本当に元にしているだけで内容はミステリー、かと思いきやコメディ、友情・バトル物としっちゃかめっちゃか。最後には主演の方の謎の歌唱パートがあり困惑してしまった。ギャグも盛り込まれていたがメタ発言が多く苦手な部類だった。
私が期待していたものは、萩原朔太郎の描く「実在への涙ぐましいあこがれ」(『青猫』)とか「事物と現象の背後に隠れているところの或る第四次元の世界―景色の裏側の実在性―」(『猫町』)とかだったので、そもそも当てが外れていた。
まあ仕方ないので本よりも芝居に重点を置いて観ていたのだが、やはり生で観るものは迫力がある。作品の舞台は猫(正確には人のような経済的文化的生活を送る猫、あるいは人の形をした猫)しかいない町で、目当ての髙橋さんはあらゆる場面での所作や表情まで猫を意識しているのだろうと感じさせられた。ステージに役者がいる劇ならではだが、他のキャラクターが喋っているときにも細かい動きを入れていて面白かった。あと、井上和彦さんが出演されていて流石の貫禄があった。特に先述の『猫町』の引用部分は彼が朗読していたのだが、強弱や速度の長短で世界観へ引き込む力があって見事だった。まあその必要性が脚本からは感じられなかったのだけれど。
内容はさておき、久しぶりに生の芝居を見れて良かった。猫耳も外ハネボブも可愛かった。明日は飲酒イベントがあってもっと近いところで見れるのかと思うとドキドキする。少し怖くもあり楽しみでもある。