父親とわたし

わたしたちは奇妙な友達親子である。共通の趣味は野球(阪神)、TDR、刀剣乱舞、艦これ。オタクに理解のある、よい親だと思っている。

奇妙という自覚はある。父親という威厳なんて正直普段はミリも感じていないし、面白いことがあれは共有して笑ったり、分からないことや悩みがあれば聞いてみて解決の糸口を掴む手伝いをしてもらう。猫好きな彼にただただ可愛いだけの猫の動画を見せるだけみたいなこともする。あれ、これまさか彼氏か?

反抗期らしい反抗期はなかった、と思っているが、父はそうでもないらしい。話しづらくなった時期はあったと思っているようだ。けれど顔も見たくないとかなったことないし、いくつになっても父と2人で出掛けることは全然気にならなかった。父は服装のTPOにうるさく、また洋画に出てくる俳優のスーツの着こなしをお手本として服選びをするからだ。正直、キメにキメた父は今でもスマートで格好良いと思う。年齢的にはおじいちゃんだし、だいぶお腹は出てきたけど。髪が薄くなってからは潔くスキンヘッドにした。母が亡くなってからは髭を伸ばし始め、いまやフォーマル寄りの格好をした父はパッと見でヤのつくお仕事のご隠居様という風体である。

母からの精神的支配があった頃に、その呪いに気付いて父に助けを求められていたらと思うことは今になって多々ある。この人は絶対にわたしを見捨てない。そういう信頼だけは確かだ。なんなら、精神疾患、発達障害が今になって発覚したわたしが絶望に落ちきらずどうにか立って前を向いていられるのは、その信頼があるからにすぎない。

ファザコンだと言われたことは無いけれど、まあ言われても仕方ないかなと思う。楽しいことを共有出来るいちばん身近な相手なのだから仕方がない。どうでもいいけど歴代惚れた男は2次元でも3次元でもだいたい水瓶座で、父親も水瓶座である。さすがにこれは嫌な共通項である。

ちなみに、ASDの話で前回書いた「好きなことしかしたくない」のことを父に話したら「またお前は難しい壁にぶち当たって……」と呆れられた。なにか別視点で意見が貰えるかと思ったら「もう俺はこれまでをのらりくらりやりすぎてそのへん答えてやれない」と言われた。ちょっと意外だった。

お互い軽口を叩いてふざけあえるうちは、感謝の気持ちは口にはしないと思う。老いを感じて寂しいような悲しいような気分になることもあるが、父は最高の友達である、と思っている。

@hamitosan
オタク。短歌。ADHD当事者。 はみと→onelinkers.com/user/hamito_hermit ういなつ→lit.link/uinatsu