断捨離のため、家にあった100枚くらいのCDを売ることにした。
Kという街にまあまあ適正な価格で買取してくれるレコ屋があるので、パンパンのリュックサックと大きな紙袋を持ってでかけた。
ついでに2年前かそこらに購入していたフィルムカメラを持って行った。これはちょうどその頃意中の人がフォトグラファーだったこともあり、話のタネになんていうまるっきりな下心から買ったものだったが、何度か遊んだりした後に告白したところ「今は誰かと付き合うことは考えていないんです」とあっけなくフられ、今ではみるのも嫌になってしまったものだ。フリマサイトで型番を調べてみると一万円くらいになりそうだったので、CDの買取査定を待っている間に、中に入っているフィルムを終わらせるために撮影し、動作確認をしようという作戦だった。
CD屋にCDを預け、公園で適当に写真をパシャパシャ撮っていると、薄青い感じのファインダーから見える景色がどうフィルムに映るんだろうと楽しい気持ちになった。
10枚くらい撮影したらフィルムが終わったようだった。古いカメラの復刻版で仕様も昔のものを再現しているため、手巻きでフィルムを戻す。しばらく使っていなかったためか、巻き戻しのネジが異様に重い。力をこめると「ジャッキ。」みたいな音がしてようやくネジが回り始めた。
頭の中の90%くらいを、これ壊れたな、というほとんど確信めいた諦めが支配したけど、気づかないふりをしてそのまま回した。回さないとフィルムを取り出せないし、中でカラカラ変な音がしているけど、とにかく回さないと・・・。
回していたネジが急に緩くなり、巻き戻し切ったので、カメラの裏側を開けた。パカ、はい壊れてる〜。やっぱりね〜。なんか棒みたいなのが折れているし、フィルムのカスみたいなのが飛び散っている。じゃあフィルムもイってるてこと?
不安と絶望でいっぱいになってトボトボ公園を歩いていると、ゴツいデジカメをもった中年男性がモデル?ぽい女性を撮影していた。それが3組くらい。普段ならなんとも思わないけれど、その時はネガティブまっしぐらだったので、昔フラれたことをまた思い出した。
大体フォトグラファーってさあ、部屋の照明がオレンジなんだよ!
駅近くのカメラ屋さんにフィルムを持っていくと店員さんに、あ、これパーフォーレーションが破れているかもしれないですね、現像できるかどうか確認しますね、と言われた。フィルムの縁にある穴だ。なんとか現像できるとのことだったので、1時間ほど待ってまた店に戻った。
店員さんが現像の詳細みたいなのが書かれた紙を見せてくれて、そこに「巻き戻しボタンを押し忘れなどの理由によりパーフォーレーションが破れていました。状態によっては店で現像できず、工場での現像になり、追加料金をいただく場合がございます。」と書いてあった。
巻き戻しボタン押してなかったわそういえば、なんだ、そっかあ。そりゃフラれるわ。部屋の照明もアホみたいに白くて明るいわ。ポケットの辺りがなんかカビで白くなっている、3年前くらいのGUのダウンを着てるわ。
もしかしたら俺が初心者っぽいのをみかねて、写真屋さんの人がすごく頑張って現像してサービスしてくれたのかもしれないと思ったら、申し訳ない気分になった。
巻き戻しにミスったためか少し画像がずれているものもあったけど、まあまあいい感じに写っていた。昔撮った友達の写真とかがあった。終わらすために撮った写真もなかなか綺麗だ。CDは1万円くらいになった。壊れたカメラはジャンクで売ることにした。家にはまだもう一個フィルムカメラがある。