教師1年目は数学と理科の2教科を教えていた。もともと数学の免許しか取得してなかったが赴任した学校では理科の教員が足りてなかったので、臨時免許を取って理科も教えていた。僕に理科に専門性はなく、子どもにとって「先生に教わったから理科がわからない」と言われることに恐怖心を覚え、あの手この手を使って授業を面白くしていた。さながらお笑い芸人のMCのように授業を盛り上げ、奇抜な導入にオーバーなリアクション。
実際、僕の授業は好評でいつも爆笑。あまりに盛り上がるので、子どもたちの笑い声の大きさにびっくりして職員室から先生が出てきたくらいだ。
自分はできる教師だ。すっかり調子に乗ってしまった。
校長先生には週に1回授業を見にきてもらっていたが、ある日校長室に呼び出された。そこで言われた一言が忘れられない。
「君の授業は面白い。だけど、面白いだけだね。結局生徒たちは何ができるようになったの?」
僕の授業は単なるお笑いだということだった。子どもたちの学習は生涯まで続く。理科という魅力を伝えずしてどうなるのか。卒業していったこともに残るのはなんかあの先生楽しかったね。だけだ。
言われた時はめちゃくちゃ恥ずかしくなったし、途中で授業スタイルを変えるのも無茶があるように思ったが生徒には丁寧に説明して授業スタイルを変えるところから再スタートした。
この経験は8年あった教師生活に多大な影響を与えた。この1年目があったから授業などでいくつかの賞を取ることになったのだから。