美術館のはなし~マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア

harulune
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弥生美術館の「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア」を鑑賞してきた。XことTwitterで告知を見て以来、早く行きたいと思っていた展示だ。とはいえ事前に調べるでもなく、フライヤーが好みだから行きたいという勢いだけで訪問した。

まず、扉から可愛かった。展示タイトルの通り「レトロ」で、ステンドグラスのような色分けで装飾されている。レトロさを感じるのは上部の花が懐かしさを覚える造形だからだろうか。色味もやさしい藤色……でいいのだろうか。入口から期待が高まる。

服飾雑貨、化粧品、喫茶など、各イラストが虚構の二十世紀初頭の百貨店の体でまとめられている。実際にパンプスやスカーフなんかも置かれていて、百貨店世界を補強する。そしてそれらの小物がまた可愛いんだ。パンプスは後方に大きなリボンの飾りとストラップ部分に球体とタッセルがついている。外の飾りも可愛いが中は花柄だ。「内部まで可愛い」は気分が上がる。

イラストだけではなくコミックで表現されている部分もあり、特に大きく頷いたのは美粧部の少女たちのエピソードである。

14歳の少女たちが化粧品を体験して、スミレのクリームの強い香りにくらっときたりくしゃみをしたり。幼いころに香水の強い香りに頭が痛くなったことを思い出す。今もあまり香りには強くないが香水瓶やムエット程度は好きだ。

喫茶室のウェイトレスさんは和装にフリルのエプロンにヒールのとがったパンプス。エプロンのポケットからはお手紙が何通か飛び出している。ひときわ大きな封筒にはハートの印。ファンがたくさんいるんだな、そしてあしらわれているのかな、なんて想像してしまう。背後においてある椅子と傍らのミニテーブルもいい。名称がわからない不勉強を恥じる。

イラストそれぞれに使われている字体(レタリング)も凝っていて、そこまでデザインするのは大変だなぁと思っていた。レタリング検討の展示もありこの印象的なレタリングはイラストレーターさんの夫が担当していると知った。イラストレーターさんご本人も「マツオヒロミの1/3くらいは池本(夫)」と発言されているくらいだ。

ランジェリーもまた可愛かった。この服装の下にこのランジェリーといった形で描かれていて、服装とランジェリーの変遷が分かりやすかった。

パネルによると、ランジェリーを「じぶんの心と体を祝福するもの」と再認識されたとのこと。気に入った可愛いものを身につけただけで気持ちも上がるし……ってことでいいのかな、祝福するもの。「自分の身体と心を押下するファッションへと転じる過程」ということだし。

とにかく「可愛い」が私の心を終始打ち据える展示だった。『百貨店ワルツ』『マガジンロンド』『万華鏡の庭』『ロマンチカ』『どらまちか』を入手してきたのでこれからは自宅でも彼女の世界を堪能できる。

谷崎潤一郎作品にイラストをつけているが、隠微な背徳感というか気怠い妖しさというか、見てはいけない気持ちを掻き立てる。これはまだ未入手なのでおいおい考えていきたい。書籍は絶版するものなので早めに決断しなければ。

同人誌はだいたい売り切れのようで、ミュージアムショップに並んでいるものしか手に入れられなさそう。いくつかはまとまって『百貨店ワルツ』になっていると思うけれども。

4月下旬に新刊がでるのでとても楽しみにしている。書店で手にしようと思っていたけど予約した方がいいかな。少し浮かれている。

写真撮影OKだったので「可愛い」と思った気持ちとともに少しだけInstagramに残しておいた。