はるか昔、かなり昔。Y売新聞の「編集手帳」というコラムが好きだった。
何気ない日々の小さな話題から始まり、どんでん返しがあり、最後は時事ネタに結びついて終わる。
文章の運びが正しく「起承転結」だった。「転」で唐突に方向性が変わる。でも「結」できちんと「起承」に結びついていて、毎朝感動したものだった。
「起承」で描かれているのは、時事ネタや事件とはまったく違う接点も何もなさそうな話題だった。それが一転こんな風につながるのかと、あまりに鮮やかな展開が本当に好きだった。
ある日、書き手が変わったのだろう。キレッキレの文章が私にとっては詰まらないものになった。徹頭徹尾その話題だけが連なっていく。
今になって思うが、私はあれを短編小説ととらえていたのかもしれない。小説好きはきっとあのコラムも好きになると思う。
記事ではその話題のみを語るべきだ派からすると無駄なことを書いていると思われるのかもしれない。その無駄にはちゃんとつながりがある。あらゆる事象は一続きだったのだと思わせたのがあのコラムだった。
少し調べてみたが、私が愛したコラムは書籍にはなっていないようだ。変わってしまった連載分は書籍化されていたのに。残念なことだ。