午前4時に目が覚めた。
二度寝をしようと思ったが、布団から出てあたたかいコーヒーを淹れ、飲み干す頃には目が覚めていたので、久しぶりに散歩にいくことにした。いつもの公園ルートではなく、なんとなく駅の方へ向かった。
外は静かだった。ぽつぽつと続く街灯や信号機の燈おかげで意外と明るかった。道路脇にある無人の大型のコインランドリー、青白く発光している歯医者の看板、遊歩道の端で稼働している自動販売機……夜にだって通る道なのだから全部目に入るのに、不思議と別のものに見えた。いつも駐車場が満車のコンビニには車が一台も停まっていなくて、店内の白い燈がいやに眩しかった。
見慣れたはずの知らない景色を通り過ぎ、玄関先や門前に燈を灯した住宅街をのんびり歩いた。誰ともすれ違わないし、道の真ん中を歩いても車も来ない。なんだか夜を闊歩する野良猫にでもなったような気分だなあとゴキゲンで歩いていると、道の脇に猫がいた。こちらに気付くと、猫は止まって身を低くして、私が通り過ぎるまでじっと待っていた。こんな時間に人間に遭遇するとは向こうも思っていなかっただろう。
住宅街を抜けて駅前に出ると、一気に明るくなったが、人はまったくいなかった。タクシーが停まっているくらいだった。軒を連ねる居酒屋が閉まっている中、すき家だけは営業していた。お腹が空いていた私はすき家に吸われた。朝食セットの鯖が美味しかった。満腹になって外に出て、24時間営業しているスーパーで今ハマっている鍋焼きうどんを5つ買って——買いすぎだろうと突っ込まれそうだが、これが本当に美味いのだ——帰路に着いた。
暗い空には三日月が引っかかっていた。ふと、今年はまだ春の夜明けを見ていないなあと気付いた。冬の間は寒いので散歩をサボっていたが、そろそろ再開してもいいのかもしれない。明日は日の出前に家を出て、朝焼けを見てから家に帰りたい。