私はあん肝が好きだ。
魚屋さんで見かけると3パックは買い、お寿司屋さんではあん肝軍艦を4皿食べ、飲食店のメニューにあると絶対に頼む。あの魅惑的なオレンジ色を思い出すだけで涎が溢れる。肝心のあんこうはそんなに食べたことはないが、あん肝の味は忘れたことはない。
昨晩、普段あまり行かないスーパーに行ったら、鮮魚コーナーに生のあん肝が3パック置いてあった。しかも半額のシールが貼られていたので、ニコニコしながら買い占めた。
爆速で帰宅し、下処理をして、ラップで包んで軽く形を整えて炊飯器で蒸した。蒸し機能がある炊飯器は楽でいい。蒸し上がるまでの時間、とにかく暇だった。しかも、蒸し上がっても冷やさなくてはいけない。つまるところ、すぐに食べられるわけではない。暇すぎる上にウキウキなあまり、キッチンで腰を左右に振って踊ってしまう悲しきモンスターと化してしまった。こういう時、咎める人も呆れる人もいないので、一人暮らしというのは気楽でいい。
ほかほかのあん肝の粗熱を取り、冷蔵庫で冷やしている間に風呂に入った。多分、お酒が飲める人は「あん肝を肴に一杯やろう!」と考えるのかもしれない。私はお酒が飲めないが、それも楽しそうでいいなあと思う。
風呂から上がり、私もほかほかになり、いよいよその時がきた。ラップを剥がすと、結構鮮やかなオレンジ色になっていてホッとした。ポン酢をかけて一切れ食べると、生臭さもなく、なめらかでめちゃくちゃ美味しかった。気が付けば取り分けた分は消えていた。あっという間だった。もっと食べたかったが、これ以上食べたら「尿酸値激高婦人」に改名しなくてはならないと自身を律し、あん肝には冷蔵庫にご退場いただいた。
そのあと色々やって床に就いたのだが、あん肝の下処理を丹念にしたから記憶に残っていたのか、はたまた美味しかったからなのかわからないが、今朝『ポケモンスリープ』の録音データを聞いてみたら、寝言で「あん肝……」と言っていて朝から声を出して笑った。