島根県大田市大森町にお邪魔してきた。
森に囲まれた人口400人のちいさな町にある、服飾と義肢装具のふたつの会社。どちらも一代で更地から事業を起こし、国内外の市場に受け入れられて、そこでの富を町へ、未来へつなぐ経営をされていた。保育に食に生活に携わる町の人々も、時代とともに新しさを招き入れながらも、暮らしの哲学を受け継いでいて。真似しようとしても途方もない歴史の重なりが結果だとして、その源泉には人の意志が強くあるのだと思った。
夢中になれることや、かっこいい、きもちいいと思えることを追求し、なぜそう思うのかの物差しを自ら決められる人、煙のように仄めく人の欲望のかたちを捉えて受け渡すことができる人が、文化を生み出すのだと思う。ぼくはその狂気を前に、心揺さぶられて迷うような人間だけれど、だからこそ触れていたいし、愛したいなと思う。