「さよなら」という言葉があまり得意ではない。その詞を交し合った人と二度と会えなくなるような気がして、何処か寂しくなってしまう。
無論、ただのネガティヴ・イメージに過ぎないのだが、どちらかというと、私は「またね」がしっくりくる。「さよなら」だと、辞世の句に聞こえてならないのだ。まるでこれから永遠に会えなくなるみたいじゃないか。
その人と二度と巡り会えず、胸の内に後悔を燻らせたまま、傘もささずに歩いていくようなものだ。そんなの私は嫌だ。
「またね」だと「また会おうね」の略になる。何日後か、何週間後か、何ヶ月後か、何年後か。そのいずれもが確約され、また会える。そちらのほうが遥かに望ましい。そんな気がする。