空気を保存したい

hashrock
·

実のところ、文章を書くのは昔から苦手だったりする。というか喋るのも苦手だと思う。意味のある日本語の文を作るのが苦手で、ちょっと長い文章を書くと文法が破綻しがちである。そういえば親もちょっとした文章の書き出しがかけなくて1時間くらいウンウン唸っていたのを思い出す。遺伝?

noteとかを見ると、まるで詩のように美しい文章を書く人たちがいて圧倒される。どうやったらそんな端正な文章が出力されるのか皆目検討がつかない。そういう人たちは、些細な感情の機微とか、その瞬間の音や気温や湿度、感触や香りまでをプレーンテキストに保存してしまう。共感覚的な表現を文章内でやりきってしまう。

自分には無理。このテキストエディタは余白が真っ白で美しいのだが、そこにどうでもいい落書きをしたい。そうしてその時の嬉しさとか、誰かの表情とか、思いついた形とかを書き留めておきたい。そうして、自分の脳内がそのまま画面に投射されたかのように、ごちゃごちゃのままにしておきたい。

まさにそういうのは紙のノートでやるべきなのだが…

まあともかくとして、どんなメモやどんなCMSが出てきても、自分はこういうわがままをずーっと言っている。ひとえに自分の文章力が足りないがために、ああでもないこうでもないと考えて、ペイントツールを作りたいなんて的はずれな努力をしてしまう。ただやりたいことは、その時の自分の嬉しさや、その時の空気の冷たさ、空のグラデーションをなにかに詰めて、あとで楽しみたいのだ。

そういえば平成の空気を詰めた缶詰みたいなのあったよなあと。残念ながら空気の温度までは持ってこれないよね。空気を保存したいなあ。子供の頃泊まった長野のスキー場の民宿の、冷たくて独特な匂いをなんとなく覚えていて、思い出すたびに少しだけ昔にワープすることができる。そんなセーブポイントがもっと欲しかったなと思う。

@hashrock
Hacker / Artist