東京に雪が降った日。花や木に雪が積もっているところを見たくて少し歩いた。団地の庭の大きな椿の木、公園の白梅や民家の椿に水けの多い雪が積もって、花のシャーベットのようだった。
帰る頃にはボアのブーツは内側まで濡れ、ビニール傘には雪が張り付いて白くなり、振っても落ちないほどだった。北海道出身の私としては「こんなの雪じゃない」と言いたくなるような、みぞれに近い雪だった。
それでも娘は喜んで、家の前の雪を雪かき用のスコップでかき集め、びちょびちょに濡れて遊んでいた。遊びが終わるのを見計らって私は風呂を沸かし、濡れた上着を拭いて干し、じっとりと水を含んだ手袋をしぼって電気ストーブの前に並べた。
こういうことをするたびに、自分が子供だった頃を思い出す。私は雪遊びが大好きだった。古い社宅には煙突つきの石油ストーブがあって、手袋や帽子が濡れるとその前に新聞紙を敷いて乾かした。時々私は、ストーブの炎を見ることに夢中になった。揺れる炎を見つめていると、まるで踊っているように見えるのだ。赤い光に照らされ、顔と目がぼうっと熱くなる、あの感覚を思い出す。
雪や風や炎が友だちだった頃が確かにあったなと、思い出す。