何をしていても、ふと思う。食事の時、仕事の時、美味しいお菓子を食べている時、DVDを見ている時、外に出て寒さに震える時、紅葉の美しさに見とれた時。ああ、もういないのか、と。いるのが当たり前だったなにかがいなくなるというのは誰にでも起こる事であり、自分が今経験している事も、世間から見れば珍しい事ではないのだろうと思う。もっと何かできなかったのかと思っても、もっと一緒にあんな事がしたかったと思っても、もういない。頭では分かっていてもまだ、現実を受け止められないでいる。
とある推理小説で好きなセリフがある。人間は生きている内、たくさんの別れを経験する。見送るか見送られるかのどちらかで、さいごには全てのひとと死に別れる。それは人に限ったことではなく、ものや行事、風景が失われる事だってある……といった内容だ。今、自分はこのセリフを噛みしめている。今回のような別れがはじめてだったわけではない。けれど、本当にこの別れは、私の中の何かに穴をあけてしまったようだ。きっとこの穴は何をしても埋まらない。そして、私はこの穴のようなものを抱えたまま生きるのだろう。