俵万智さんの『たんぽぽの日々』を読んだ。子育てをテーマにした短歌とエッセイ集で、各ページに写真家の市橋織江さんの写真が添えられている。この短歌と写真の組み合わせ、そして添えられたエッセイでさらに情景が深まるスタイルが個人的にはもの凄くよかった。
次の短歌が、書名の由来となった短歌である。
たんぽぽの綿毛をふいて見せてやる いつかおまえも飛んでゆくから
子どもはいつか自分の側を離れて飛んでいく。そんな様子をたんぽぽになぞらえての書籍タイトル『たんぽぽの日々』だ、ということが最初に書いてある。まさに二人の幼児を育てている身としても、本当にその通りだよなあとしみじみしてしまった。他にも子育てをしている身からすると「そうだよねえそうだよねえ」と頷く短歌もあり、その経験があったわけではないがほろりときてしまう短歌もあり。「ちょっと本の厚さが普段読んでる本に比べたら薄いかも?でも息抜きに読むにはちょうどいいか」などと、ある意味侮っていたことを後悔するくらい、どのページも非常に濃かった。短歌というのはあの31文字にさまざまな想いを込めて言葉を選ぶものだということは、頭ではわかっていたけれど、この『たんぽぽの日々』を通して心の底から理解したように思う。子育て中で同じ経験をしている身として、自分だったらどういう言葉を選ぶかななどと考えてみたがもの凄く難しかったし、俵万智さんの選んだ言葉をかんたんに超えられるとは全く思えなかった。でも誰に見せるわけでもなく、自分用にちょっと考えてみてもいいかな、と思ったりする。そのくらい短歌には深さや可能性がある。
実は俵万智さんの作品については、一番有名な「サラダ記念日」の印象が強くて、他のものを読んだことがなかった。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
『たんぽぽの日々』が面白かったので、別のものも読んでみたいと思ったところで、歌集ではなく絵本を紹介するエッセイ集『かーかん、はあい:子どもと本と私』を手に取ってしまったのはなんというか間違っているような気もしつつ、せっかく俵万智さんの短歌や文章は面白いぞ!ということに気が付けたので、色々読んでみたいなと思う。そして、いい短歌ができたらしずかなインターネットに流すかもしれないし、流さないかもしれない。でも「いい短歌」かどうかにとらわれず、趣味としては好きなように書いてみるのがいいのかな、と思ったりもする。