新しい年の一月めが早くも終わろうとしていて驚く。明日は息子の誕生日で、十二歳になる。
生まれた時のことはよく覚えている。立ち会い出産のはずだった元夫は勤務中で、だから岡山から母と妹が来てくれて、妹は家で娘の世話をしてくれていた。出産に付き添ってくれたのは母だった。真夜中で、分娩室に入ってからは先生と助産師さんとわたしひとりだった。
娘の時はたしかお腹が痛いかもとなってから十六時間ほどで生まれた。第二子はその半分くらいの時間になることが多いらしく、陣痛らしきものが来てからかなり痛かったけど耐えていた。が、実はかなり進んでいたらしく一時間程度で「もう産めるよ」と言われ、分娩室へ。娘が作ってくれた産道をあっという間に降りてきた息子。頭が出てきている最中に陣痛が去ってしまい、次の痛みが来るまではさまったままだったので、産まれたばかりの時はちょっと頭が長かった。
処置が終わり、入院する部屋に戻ってもしばらくそわそわして眠れなかった。するとコンコンとドアをノックする音が聞こえ、答えたら勤務中の夫がいた。夫は消防士で、偶然にも出動し乗り合わせた救急車の行き先がちょうどここだったらしく、搬送が終わったあと先輩の計らいで赤ちゃんを見にこれたそうで、看護師さんから「さっき生まれた子のパパでしょ?」と言われるくらい似ているらしいと嬉しそうに笑っていた。わたしはなんだか無事出産を終えた自分が誇らしくて、すごいことをしたでしょ? と威張っていた気がする。
あの日から十二年、さまざまなことがあって、いろいろ変わって、似ていると言っていた夫は別のどこかで多分生きていて、娘も息子もわたしも成長している(最近は反抗期が鬱陶しいので自分の子ではなく同居している他人と思うことにしていることも多々ある。けれどこの対策はわたしに合っているので良し。また、どちらかが反抗期状態だとどちらかが通常運転で、反抗期×二人にはならないところが助かっている)。
もうすぐ新しい家に引っ越すし、わたしたちは三人で正解みたいな生活をしている。人の人生が輝いて見え、羨ましく思ったのも過去になった。これがわたしにとっての幸福な日々だと胸を張って言える。でも、欲をいえば犬ちゃんとも暮らしたい。出会いたいな。まだ出会ってもないくせに、なんともうつけたい名前を決めているのだった。