ここのところバタバタと慌ただしくしていたので土日の予定は完全に空けていた。誰かから電話が来てもラインが来ても全部まるごと無視したいみたいな気分で、昨日は二回も昼寝をしたし、夜はお酒を飲みながら動画を見つつキッチンの掃除をした。見ていたのは、「アイシナモロール」という、サンリオのシナモロールのパラレルワールドのお話で、大人向けに作られていて、YouTubeで全編公開されている。ナレーションが榎木淳弥くん。アイシナモロールはひとこともしゃべらない。いつもひとりで何かしらしている。コーヒーを淹れたり、お買い物に行ったり、お菓子を作ったり、寒い中七輪でお餅を焼いてお汁粉をつくったり、カレーを作ったり、電車に乗って景色を眺めたり、温泉に行ったりする。アイシナモロールのキャラクターデザインはビターなかんじで、口元もつんとしていて愛嬌も何もないのだけれど、ショートアニメの中の彼が楽しそうなことがわかるのは、たまに口角が上がったり気持ちよさそうに目を閉じたりするから。基本的に日常を切り取っただけみたいな映像で、オチはあるときとないときがあるのだけれど、榎木くんの優しいナレーションも相まってなんだか無性にくせになる動画だった。見終わった時、気づけばキッチンはぴかぴか。動画に影響されて絶対においしいものを作ろうと思った。
そんなわけで今日は朝からおしるこを食べた(偶然にも小豆とお餅が家にあったから)。そのあと映画を二本観て、本も読もうかなと思ったら本棚の下の方に収めているずっと昔に買ったレシピ本に目がいった。レシピ本はどれだけ古くても材料さえ手に入れば作れちゃうから不思議。そのなかにあったラム酒がたっぷり入ったプリンにそそられて、買い物に行った。ラム酒と卵と牛乳とグラニュー糖。今日は雨だったから、傘をさして歩いた。
カラメルソースを作るためにグラニュー糖と少しの水を火にかける。ぶくぶくと沸騰するけれど一向に茶色くならない。失敗したのかな、と思いつつ辛抱強く待った。しばらくするとじわじわと底の方から茶色くなっていく。残りの水を加えるのを、でもあと少しだけ待つ。かなり濃い茶色になる。これがきっとカラメルソースの色だ、と思ったところで用意していた水を投入───しかけたが、それに強く反応して、まるで揚げ物をしているときに水分が入ってしまったときのように、鍋の中がばちばちと弾けた。焦げたグラニュー糖に水を入れるとこんなふうになるなんて知らなくて目を丸くしてしまった。レシピを見ると、気をつけてと確かに書いてある。よし、と思いながら鍋を傾け、静かに静かに入れていく。一気に滑らかになってカラメルソースが出来上がった。理科の実験のようで楽しかった。その後、プリンが焼けるまで本を読んでいた。