漫画家の河内遙先生がとても好きなのですっていう話を今日はながなが書いちゃうぜ!と意気込んだはいいものの、どうしよう……わたしのなかに点在している支離滅裂な熱狂をうまく語れる自信がない。河内作品の目映さを伝えるには手持ちの言葉もあまりに乏しい。けれど、思いをともにする誰かのもとへ いつの日か流れ着くかもしれないと想像するととても楽しく、また無力な駄文に過ぎないけれど、これをきっかけに手に取る方がひとりでも増えてくれたならこの上なく幸せ……そんな期待や願いをちょっぴり込めて好き勝手に書き記してみようと思う。魅力を並べれば切りがなく、読むひと次第で無限に発掘できちゃうこと請け合いなのだけど、今回は超個人的な視点にて。
“ 〇〇男子 ”といえば
そう、もちろん 「いくえみ男子」!例にもれず、わたしもいくえみ男子とともに青春時代を謳歌してきたひとりですが、河内作品の男たちも 「河内男子」 と銘打っていいくらいに極彩色。他ではお目にかかれない、先生お手製のなんとも独特な妙味に包まれているのです。
最近ひさしぶりに『夏雪ランデブー』を読み返していたのだけど、どちらの男にも感情移入が捗ってしまい苦しくってもう大変。 (アニメ版は未体験だけど、葉月役が中村悠一で島尾役が福山潤ですって…(血圧上昇)) こんなにコミカルな設定でいて なぜこんなにもウェットな気持ちになれちゃうの!?っていうのも河内作品の真骨頂だと思う。しかし、葉月……よい。むかし読んだときより尚よい。あの真っ直ぐなわかりやすさが五臓六腑に沁みわたる。ミステリアスを愛しツンデレに翻弄されがちだった過去のわたしに言ってやりたい、わかりやすさこそ正義だぞっ。たとえ猫派だったとしても、この歳になれば大型わんこ系男子がありがたいものです。結局は直接差し出されたものしか信じない自分のような人間にとって、シンプルな優しさ・明白な愛情ほど喜ばしいものはないのだと、そう切実に思わされる。匂わせも駆け引きもいらないんだ、そんなもの。
さて。真っ直ぐだからといって、ただただ澄み切ってるわけじゃないのが河内男子のいいところでして。多方向への拗らせっぷりもなかなかのもの。そんなひと癖もふた癖もあり、ひと味もふた味も違う男たちを思う存分楽しめるのが すばらしき河内作品なのです◎そしてなにより、彼ら めちゃくちゃ泣きます。大粒の涙をボロボロ見せてくれる、これも特筆すべき点。どう言ったらいいだろう……やんわり陰気というか、どことなく根暗というか……そういうひとから漏れでる色気にめっぽう弱いわたしですが、これに頷いてくださる方にはとりわけ推したい河内男子であります!
へんてこな愛
もちろん表層的な見目麗しさ、そして乙女心を鷲掴みにするど真ん中のキュンや切なさを堪能できることは大前提として、その上で河内先生って 「のぼせ上がった末の へんてこな言動」 を描く天才なんですよ。その 「へんてこ」 ってやつを説明するのはとても難儀なのだけど……強いて言うなら 「無垢とフェチの狭間で暴発する衝動」 みたいなものかなって捉えている。
例えば、どうしてそれがときめきや欲情に繋がるんだよ!?っていうイレギュラーな微熱が胸の奥底に燻っていて、どんなに明け透けな間柄であっても それだけは何となく言い淀んでしまうアレコレが みんな心密かにあるんじゃないかと思うの。もっと過激なことだってその場のノリで言えちゃうくせに、こと “ コレ ” に関してはなぜか口先でブレーキが掛かってしまう、 「ささやかでいて本丸」 の未共有な部分。そっと心に押しとどめている恥ずかしい感情、どうにも否定してしまいたい暴力的な熱情、自分でも気づいていない無自覚な劣情、そんな本能ともいえる高純度なものたちが嗜好性と相まって また理性と絡まりながら 押し合いへし合い噴出する様子が 「へんてこさ」 に繋がるんじゃないかなって思っているのだけど。
かく言うわたしもあるんですよ (急な告白) 。なんなら つい最近まで自覚がなく、いまになってようやく気づいた謎嗜好が。それを友人の恋愛話に乗じ 思い切って打ち明けたのだけど、ただひたすら 「 ──え?(友)」 「ん?(わたし)」 「いや、なん……え?(友)」 「ん?(わたし)」 の応酬になったので もう永遠に秘密ですの気持ちだよ。あっ、変な憶測を呼んでしまわないうちに言っておくけれども、びっくりするほど日常的な 何の変哲もない動作です!べつにセクシャルでもなんでもない、なぜグッとくるのかも不明瞭 (……いや、厳密に言うと ほんのり心当たりはある…けど小っ恥ずかしいからここでは内緒) 。何はともあれ、そういうのが誰しもあるはずなのよ!ちなみに『涙雨とセレナーデ』にて大好きな孝章様がこの仕草をしてくださっており、それはそれは感無量の極みでした……へへっ///
下心や嫉妬心の切り取り方が “ お決まり ” じゃないからこそ、そして どうしようもない思いにほだされ、ダサさや情けなさやユーモアに塗れたキャラクターたちだからこそ、自分の抱えるへんてこな恋心をも まるごと肯定してもらえるような気持ちになるのだね。
よくよく噛んで 何度でも
そんなわけで、一風変わった展開も多く 初対面に強いとは言いづらいように思う。ときに気圧されることだってあるかもしれない。そりゃあそうです、人知れず蠢く 「恋と変は似てるね」 の詰め合わせなのだから咀嚼時間が掛かるってなもので。どうかスルメよろしく長くゆっくり味わってほしい。ぐるりぐるりと繰り返すほどに、愛おしさや可笑しみが幾重もの波紋となりゆくのも河内作品の凄みであり持ち味だと思うから。そうやって彼ら彼女らの愛すべき奮闘を見守るうち、一緒に顔を赤くしては やがて自分を見つけてしまうの。ああ わたしがそこに居る、ああ これはいつかのわたし。
(長くなったので、つづきは後日)