桜の花の満開の下、きみは仰向けで横たわっている。髪にも顔にも桜の花びらが降り掛かり、目を瞑ったままくすくすと笑うきみを、傍らに立つわたしはぼんやりと眺めている。
花びらに埋もれちゃうよ、と声を掛ければ、目も開けずにそれは素敵ね。と応える。
「桜の下には屍体が埋まってるものよ」
「屍体になるまで寝てるつもり?」
わたしの少し呆れた口調に、きみはようやく目を開け笑顔を見せた。
「これが最期の光景なら、悪くないかな」
縁起でもないこと言わないで、という言葉を飲み込んで、わたしもきみの隣に寝転がる。きみがこちらに顔を向けてわたしを見て、また上を向く。
「本当。素敵な眺めだね」
わたしたちは大地に仰向けに寝転がり、満開の桜を見上げている。花びらがとめどなく降ってくる。どちらともなく手を繋ぐ。桜の花の満開の下、きみとわたしは横たわり、終わりの時を待っている。