半年に1回の眼科に行く。乾燥する季節は目薬のお世話になるので、検診がてら通っている。ここはいつも予約でいっぱいで待ち時間が長い。『小川未明童話集』を開いて待つ。半年前と同じ本だ。今日は意外と早く呼ばれてあまり読めなかった。
お待たせしてごめんなさいね、と先生が言う。診察室へ入る前に検査は終えているので、診察を受け目薬の処方をお願いする。
薬局へ行って処方箋を渡し、代わりに番号札をもらって順番を待っているあいだ、近くをぶらぶらする。そうして目薬を受け取って帰路に着く。だいたいいつもこんな感じ。
今日は「お昼ごはん食べようよ」と家族に誘われたので病院が終わるころに待ち合わせをした。スープとパンが食べたいって、もうお店は決まったようなもの。
「まだあのふわふわトートあった?」と会った瞬間に聞かれる。「なかった~ 売り切れたっぽい」「ほんとに?」連れだってその店へ行く。
去年からずっと狙っていたファーのトートバッグがあった。ミルクティー色したぬいぐるみみたいな触り心地トートバッグ。1か月くらい前にセールになっていたが、悩んで結局買わなかった。買えばいいのに、と言われた。たしかにぜんぜん高価なものではないけれど、高い安いの話じゃないんだな。これにはこれくらいかなというわたしの中の予算があって、大人だって(大人だからこそ、かな)そういうのふつうにあるよね。
見に行ったけどやっぱり見当たらない。お店には春物が並ぶようになっていて、きっと売れてしまったんだろう。
目薬を受け取ってから雑貨屋をのぞき本屋で少し時間を潰し、お昼時を避けてパン屋さんに入った。30分ほど前は満席だったのが空席ができている。少し遅めのランチになった。おいしいね、とコーンスープをリクエストした家族が言う。「ちょっとおしゃれなカフェでごはんができて満足」なのだそうだ。
グリル野菜のチーズフォカッチャをぺろりと平らげて、パイに手を伸ばす。美味いクロワッサンやパイは食べたあとにテーブルが散らかるもの、らしいので、一口かじるたびにさくさくとかけらが落ちてゆくのは正解。アーモンドクリームとラムレーズンの組み合わせって美味しい。
ふと窓の外を振り返ると、行き交う人の中に袴姿の女の子と母親らしき二人を目にした。そういえば行きにも似たような出で立ちのふたり連れを見たのだった。近くの小学校は終業式だったらしい。終わり、そして始まりの季節だ。
少し残念だけれどこれからの春のことを考える。今日だってもうマフラーをしてこなかった。そのうちコートも軽くなる。空調のきいたあたたかな窓の内側で、ファーのトートバッグのことをちらりと思い出した。
今日のごはんはサバの塩焼き。昆布出汁で味付けしてある商品なので、わりとしっかり味がする。こんにゃくとがんもの煮付けも作って明日のわたしへお裾分け。おやつにもらった千疋屋のレーズンクッキー美味しかったな。フルーツ屋さんだけあってどれも香りがいい。