Amazonで本を注文した。
WIREDの記事内で紹介されていてずっと欲しかったものだ。大型の洋書で、写真が多いとはいえ読めない本にこの値段……と躊躇し、“あとで買う”に放り込んであった。
その間にも著書はハードカバーでちょこちょこ売り切れと復活を繰り返し、気づけばソフトカバーが発売されていた。買おうかな、と思ったときにはどちらも欠品状態が続いていて、やっばりあのとき買えばよかった、と少しばかり後悔していた。
忘れかけていたころ、何気なしに商品ページをクリックした。……ある! 在庫が復活している。
“あと〇個”の表示を見て、慌てて購入手続きをする。お届け先住所を入力してください?? そういうことね、OK OK! 発送元は海外のブックストアなのだ。ダメ出しされながらローマ字表記で宛先を入力する。何度も確認してから確定ボタンを押した。
お届け予定日は約1か月後。きっと海の向こうで「ジャパン? まじかよハハ」とか言われてテキトーに梱包され、あっちへぼーんこっちへぼーんと放り投げられトラックに積み込まれてるんだろう。やっぱり船便かな? 税関も通るし時間かかるんだろうな。「海外からの荷物は届いてもボロボロ」という話を聞いたところだったので、そんな心配ばかりしていた。
結論から言うと、そのブックストアからは本が届かなかった。
注文から1ヶ月半くらい経ち、さすがにこれはと注文履歴を確認する。配達状況はブックストアから発送されたところまでしか確認できない。Amazon発送ではないので、とりあえずブックストア宛に問い合わせしてみることにした。
Google翻訳を使った自信のない英語のメールに、わりとすぐに返事はきた。「注文は確かに承ってるけど、配送履歴が追えないからどこにあるかわからない。ちょっと調べてみるね!」といったふう。どう考えても見つからないやつ……
うーん。これって進展ある? このまま泣き寝入りってない? ならダメ元でと、今度はAmazonに問い合わせてみる。
チャットで状況を説明すると、電話でということになった。え?かけてくるの? と思っているうちにスマホが鳴る。オペレーターの声は男性。おそらく中国人かな?と思われる名前だった。流暢で丁寧な日本語を話し、相槌を打ちながら親身に聞いてくれる。
ブックストアから届いた返信を見てもらった。文面にうんうんと頷き、時折英語を呟くのが電話越しに聞こえた。
「では、こちらからもストアに問い合わせてみましょう。それで、どうされますか?」
「どう」とは、返金などの対応についてだろう。欲しいと思ってやっと購入した本、出来るなら手に入れたい。配送が遅くなっているだけなら待ちたいし、配送事故なら再注文したい。でも、どうにも出来ないなら返金してもらいたい、そんなふうに伝える。すると男性は答えた。
「わかりました。では、いい感じにしておきます」
あ、はい。電話を切る。んんん? いい感じっていい感じ?? あの人いい感じって言ったよね? 日本企業のコールセンターからはぜったい聞くかない言葉だ。さすがグローバル企業〜!と思うと同時に笑ってしまう。いい感じにしてくれるんだって。じゃあいっか。なんだかその響きが頼もしく聞こえた。だってこれ以上悪いようにはならないってことだ。どうか、いい感じになりますように。
翌日、オペレーターの男性から連絡がきた。結局配送の確認が取れなかったので返金対応になり、例のブックストアを確認すると本の在庫はもうなかった。
けれどわたしの手元にはその本がある。
もう手に入らないのかと憂鬱な気分で商品ページを眺めていたところ、別のブックストアで取り扱ってるのを見つけた。たぶん取り扱い店が変更されたのだろう。そもそもあのブックストアは在庫を持っていなかったのではないか。返金対応が早かったのもそういうことなのかもしれない。
また届かなかったらどうしようと一抹の不安もあったが、今度はきちんと海の向こうからやってきた。包みも破れず、角も潰れず、きれいなままで。しかも元のストアより安かったし。
飾ってある本を見るたびに、なんだかんだですべてがあの言葉でうまくいったように思ったりする。物事のすべてが完璧や最高!にいかなくてもいい。だいたいのことはあれくらいの心構えでいればいいかという気がしてくる。ところどころで帳尻が合えば、それもまあ悪くない。
ありがとう、オペレーターの人。おかげで“いい感じ”になったよ。
今日のごはんはスープカレー。カルディのもとを使う。「具材に焼き目をつけたらカレーと煮込みます」とある。いや君これ煮込んでなくない?と完成図にツッコむ。鶏もも肉、にんじん、玉ねぎに焼き目をつけて煮込み、ナス、ピーマン、蒸したじゃがいもは揚げ焼きっぽくして盛り付ける。ふつうのカレーより手間がかった〜