近くのコンビニまで、散歩もかねて寄り道をする。
家を出てわりとすぐに、ギィ、と少々不愛想な鳴き声が聞こえて振り返った。コゲラだ。日本にいる最小のキツツキ。庭にやってきたのを発見してから、山に行かなくても住宅地でキツツキが見られることをはじめて知った。シジュウカラと1,2位を争うくらい好きな小鳥。キノコの生えた一軒家の低木につかまり、ちょこまかと上を目指しながら木をつつく。耳を澄ますと、ココココ、とくちばしで木を叩く音が聞こえることもある。枝を伝い、枝から枝へ飛び移り、隣家の木へ移動していく。しばらく見守ったその姿は屋根をかろやかに飛び越えていった。
コゲラの飛び去った方へ足を向けたが鳴き声もせずすぐに見失う。一軒家の並ぶ道に入り込み、庭先のチューリップやキキョウ、名も知らない黄色や白の花々が目に留まる。どこもかしこも春色に彩られていて、漂う風はたぶん花の香をまとっている。これで曇り空でなかったら、完璧なお花見日和だったんだろう。
先回りされるかのように行く先々で、シジュウカラの春の歌が聞こえる。道を曲がり、公園に立ち寄った。入る前から中で鶯のきれいな鳴き声が聞こえている。ここは人の背丈ほどの茂みが公園の一角を占めていて、鶯のすみかになっている。きれいなホーホケキョがひとつ、それに対抗するように公園の外からケキョケキョともうひとつ鳴き声がした。いくつか植わった満開の桜を見上げながら小鳥の影を追う。シジュウカラ、エナガ、メジロ……カラスが不意に2羽飛び去って行く。気づけば背後から3羽、ドバトがとことこと地面をつつきながら近づいていて思わず声が出た。正面の茂みの中の、わりと大きながさごそ歩き回る音に気を取られていたのだが(ネズミあるいはタヌキか?)もしかしたらドバトなのかもしれない。
気のせいか、と思ったが今度はすぐに鳴き声が続く。少しずつそれは近づいてきて、大きな木のてっぺんのほう、豆粒の影がするすると枝をのぼっていくのを見る。どうやら目的地は一緒だった様子。螺旋階段を駆け上るように元気なコゲラの姿を少し眺めてから、公園をゆっくり1周する。
もう小鳥の声のほとんどしなくなった公園を後にしようと出入口にさしかかったところで、ギィ、と鳴き声が聞こえ踵を返した。曇り空のせいもあって逆光気味の木立は鳥の姿を探すのが難しい。耳をそばだてても何も聞こえず帰ろうとするとまた一声、足を止め木々を仰ぎ姿を見つけられず背を向けるとまた一声、まるで引き留めるように誰もいなくなった公園にその声だけが小さく響く。そんなことを数度繰り返し、少々後ろ髪を引かれる思いで午後の公園を出る。
ギィ、と中から声がする。またねと一度振り返ってからコンビニへ向かった。
体は小さいけれど鋭くしっかりとした爪を持っている。他の小鳥に比べて、人間が近くにいてもあまり気に留めない印象。混群を組んでいるとそのマイペースさで置いていかれていることもしばしば。一生懸命つついている姿も、ちょっとやる気なく聞こえる鳴き声もかわいい。最愛。
今日のごはんは2日目のロールキャベツ。型抜きパスタを戸棚の奥から発見して(クリスマスのやつだよ……)スープで煮込んでから添える。ほろほろのとろとろ。あしたはおみやげのカレーパンたーべよ。じゃが入りだぞ!