景色や空気の手触りが分かるような文章が好きだ。『途上の旅』は著者が訪れたいろんな国の自然の風景、思い出を記している。
知らない単語を調べるのと同じように、エッセイに描かれた湖畔の風景を検索する。自分が想像した景色とあまり差異がなかったとき、行ったこともない風景のかけらが自分のなかにもあったことに気づきうれしくなる。実際には著者の見たもの、感じ入ったものの100分の1にも満たないのだろうが、霧の湿度を含んだ空気の重たさ、風に吹かれ草原にあらわれる緑の波間、白く乾いた薄っぺらな石の感触、それらがわたしの肌や息を吸い込む喉、または手のひらによみがえるとき、著者とわたしの想像力に感謝する。これがあれば、人はどこへだってゆける。
魯迅は『故郷』の最後に、“もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。”と記した。読書の向こう側、本のなかの世界へ通ずる道があるとすれば、著者というあなた、わたし、そして、今まで触れてきた多くの作品たちの想像力で出来上がっているのだろう。
次の本へ、心に本をたずさえ旅人は道をゆく。あまたの想像力の連なりが、やがて道になるのだ。
今日のごはんは鮭の塩焼き。やっぱりここの鮭は厚みもあり脂ものっていて美味しい。副菜はアスパラと新じゃがのジャーマンポテト風。味付けはマーガリン、マヨネーズ、粒マスタード、クレイジーソルトにコンソメ少し。