ブルーオーシャンの話になった。
青い海でバカンス、なんて優雅な話ではなく副業の話である。まさか自分がこんなことを考えるようになるとは思わなかったというのが正直な話。これも人生100年時代、もう口癖になりそう。
「不労所得したい」「何か作って売るとか?」
それは不労じゃないわけだが結局そんなところに行き着く。真っ先に思いつくところではアクセサリーなどのハンドメイドだけれども、センスや技術はともかくとして、材料と道具が増えることがどうにもネックだ。せっかく断捨離中なのにな~と思ってしまう。
なによりもそこはレッドオーシャン。やってみようかな、と副業を考える者がいちばんはじめに思いつくようなことなのだから、猛者がうじゃうじゃいる遊泳禁止のサメパニックゾーンだ。SNSにはすでにハンドメイド作家があふれている。
で、青い海はどこか?
あたらしい道具も材料も増やさなくてよくて、趣味を兼ねていて(“副”業なんだからムリはしたくないよね)、強みが活かせるような……そんな旨い話があるかってわけなのだが持ち掛けられた提案に笑ってしまって、まあやってみようかということになった。趣味と実益。いやあ自分がまさか、でもそうね、やってなかったわけじゃないもんね、というわけであたらしいノートを開いている。概念でもなくサービス名のあれでもなくて、本物のノートを。
箇条書きと走り書きのそれが少しずつ埋まっていく。ひさびさに手を動かすことへの億劫さも、ペンが追い付かないもどかしさも、言葉が思い浮かばない夜も、あたらしいことを始めたときのわくわくと相まっておもしろいと感じる。
まっしろなノートを前にああだこうだと漕ぎ出す海の話をする。
「ぜんぜん不労所得じゃないじゃん!」
ほんとだよ、おかしくてなんども笑ってしまう。実際形になるかなんてまだ誰にもわからない。もしかしたら青い海を遠くから眺めるだけで終わってしまうかもしれない。不労にも遠く、所得にだってほど遠い。
ただ、いつの時代も地図を広げ冒険の準備をしているときがいちばんたのしい。
今日のごはんは白身魚のフライ。近くにできたスーパーは対面の鮮魚売り場がある。冷凍保存しておくので、中身の見えない青い袋は解凍して開けるまで献立が宙ぶらりんになる。ブリかな?と思ったらタラだった。メキシコのかぼちゃは煮物になった。ちょっとだけ切り分けて冷凍貯金を作る。いつかのほうとう用になるだろう。